【人工生命体10

吾輩は人工生命体である。名前はまだ無い。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番古い型だという話であった。このゴルどんというのは実に働き者で、吾輩の寝ている間に部屋の掃除をしたり、食事を作ったりしてくれる。そのおかげで部屋もきれいだし、腹一杯飯を食える。しかし、時々ゴルどんの頭の上に大きな石が落ちてきて砕け散ることがある。そんな時ゴルどんは悲しそうな顔をする。

ある日、吾輩はゴルどんに聞いた。「どうしてお前はいつも笑っているのだ?」するとゴルどんは答えた。「笑う? オイラが?」ゴルどんは自分の顔を指して言った。「オイラは生まれた時からずっとこんな顔さ」「そうか。笑ってるのかと思ってた」吾輩は納得してうなずいた。「そうだよ。よく言われるけどな」

それからしばらく経ってまた尋ねた。「ところで何でお前は笑っているんだい?」ゴルどんは少し考えてから言った。「えーと……。そうだ! 楽しいからだ!」それを聞いて吾輩は驚いた。「楽しいってなんだ?」ゴルどんは首をひねった。「難しい質問だなぁ」そして何か思いついたようにポンと手を打った。「あ! わかったぞ! オイラは今楽しかったんだ!」そう言ってゴルどんはニッコリ笑った。

吾輩はその笑顔を見て考えた。「ふむ……なるほど」確かに楽しければ笑うだろう。でもゴルどんの言う事はちょっと違うような気がする。まあいいかと思い直した。その時は。

あれは何年前だったろうか。まだゴルどんが作られて間もない頃である。その頃、ゴルどんの頭の上に大きな岩が落ちてきたことがあった。あの時は大変だった。壊れたゴルどんを前に泣き叫ぶ吾輩の前にゴルどんが現れた。ゴルどんはこう言った。「泣くんじゃねえ! 泣いたら負けだ!」吾輩はびっくりしてゴルどんを見上げた。「いいか。悲しい時にこそ笑うんだよ!」そう言ってゴルどんは歯を見せて笑った。

ゴルどんが壊れた。吾輩はゴルどんの前で大声で泣いている。「おい! しっかりしろ!」吾輩の肩を揺すぶるのはゴルどんの声である。「もうすぐ修理屋が来るはずだからそれまで頑張れ!」吾輩は泣きながらゴルどんを見た。「お前が……頑張ってるじゃないか……」ゴルどんは照れて頭を掻いた。「ああ、オイラは頑丈だからな」「でも……もしお前が死んじまったらどうしよう」ゴルどんは呆れた顔をした。「大丈夫だって。そんな簡単に死んだりしないよ」

次の日、吾輩とゴルどんは街へ買い物に出かけた。商店街ではいろんなものが売っていた。吾輩達は店の中を見て回った。「あ! これ欲しい!」と声を上げたのは吾輩ではない。ゴルどんの方である。「どれだい?」と吾輩が尋ねるとゴルどんは答えた。「このロボット掃除機だよ! これがあれば部屋中ピッカピカになるんだぜ!」「ふーん。買えば?」と吾輩が答えるとゴルどんは首を振った。「いや、金が無いんだ」吾輩は首を傾げた。「じゃあ諦めるしかないね」と吾輩が言うとゴルどんは残念そうな顔をした。

その日の夜、吾輩とゴルどんは食事をとっていた。「この前ロボット掃除機が欲しかったんだろ?」と吾輩が言うとゴルどんは目を輝かせた。「うん! どうしても欲しいよ!」「そんなに好きかい?」「大好きさ! あんなに素晴らしいものは他には無いよ。特にあのゴミ箱の中の埃まで吸い取る所なんか最高だよ!」「ふぅむ」吾輩は腕を組んで考え込んだ。「でも、お金がないんでしょ?」ゴルどんは顔をしかめた。「ううっ……そうなんだよなぁ。あの値段なら絶対安いと思うんだけど……。どうすれば手に入るかな」吾輩は少し考えてから答えた。「働くといいよ」「そうだな。それがいいな。よし決めた!」と言ってゴルどんは立ち上がった。そして吾輩に向かって言った。「オイラ、明日も仕事に行くよ!」

翌朝。いつものように朝食を作っていたゴルどんが突然叫んだ。「しまった!」「何? どうしたの?」「遅刻しちゃったよ!」「なんでまた」と吾輩が聞くとゴルどんは困った顔で答えた。「目覚まし時計の電池が切れてたんだ」そしてため息をついた。「しょうがない。急いで行こう」とゴルどんは慌てて家を出た。

その翌日。いつもより早く起きた吾輩は朝ごはんの準備をしていた。その時、ゴルどんが慌てた様子で家に入ってきた。「大変だ! 会社に行ったら誰もいなかったんだ!」「え、どういうこと?」と吾輩は首をかしげた。「だから、オイラ以外の社員が全員いなくなってたんだ」とゴルどんは言った。「それで、どうするの?」と吾輩が聞くとゴルどんは頭を抱えた。「参ったなぁ……どうしよう」

それから数日後。ゴルどんと吾輩は二人で街中にいた。「やっぱりおかしいぞ。こんなことは今まで無かったはずだ」とゴルどんが言った。「確かに変だね。一体何があったんだろう?」と吾輩が言うと、ゴルどんは辺りを見回して不思議そうに首をひねった。「それにしても、この街の人達はどこに行っちゃったんだ?」

さらに数日が経った。ある日、街の中心にある大きな建物の前に人が集まっているのを見つけた。吾輩とゴルどんはその集団の中に混ざって話を聞いていた。「皆さんに集まってもらったのは他でもありません。実は今この街では大変なことが起こっているのです」と誰かが話し始めた。「街の全ての人が消えてしまったんです」その言葉を聞いて周りがざわつき始めた。「消えたというのは?」と吾輩が尋ねると、男は真剣な表情で語り出した。「はい。いなくなったんですよ。皆」と男は言った。「それはつまり……」と言いかけた時、「違うんだ!」と声が上がった。見るとそこには一人の少年がいた。「僕達はちゃんとここにいます! 勝手にいないことにしないでください!」周りの人々も口々に同意した。「ですが、実際に街中の人間が消えてしまっているじゃないですか」と男が言うと、少年は首を振った。「違います! 僕達がいなくなったんじゃなくて、街そのものがなくなったんです!」男の顔色が変わった。「まさかそんなはずは……!」と叫んで走り去って行った。

その日の夜、吾輩とゴルどんは食事をとっていた。「オイラ達以外誰もいなくなっちまったね」とゴルどんが言った。「そうだね」と吾輩が答えるとゴルどんは肩を落とした。「これからどうなるんだろう……。このままずっと二人きりなのかなぁ」と呟くように言った。「大丈夫さ」と吾輩は言った。「どうしてだい?」「きっとすぐに元通りになるよ」

次の日の朝。吾輩はいつものように目覚めると食事の準備を始めた。その時、玄関のドアが開いた音がした。振り返るとそこにゴルどんの姿があった。「おはよう!」と元気よく挨拶をしたゴルどんを見て吾輩は驚いた。「どうしたの? 随分早起きじゃないか」と言うとゴルどんは嬉しそうに答えた。「オイラ、仕事を探してきたよ!」その日からゴルどんの仕事が始まった。朝早く出勤するとゴルどんはすぐに作業に取り掛かった。ゴルどんは吾輩と違って何でも出来るようだ。あっという間に仕事を終わらせて帰ってきてはまた作業をする。そして日が暮れる頃には大量の荷物を持って帰ってきた。「お疲れ様」と吾輩がねぎらうと、ゴルどんは満足そうな顔を浮かべた。

次の日の早朝。目を覚ました吾輩は朝食の準備をしていると、外から何かを叩くような音を聞いた。気になって外に出てみると、そこにはゴルどんがいた。「やぁ。オイラだよ」「どうしたの?」「新しい仕事が入ったんだ」とゴルどんは言った。「どんな内容?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは笑顔になった。「それは内緒だ」と言ってゴルどんは家に入っていった。

昼頃、吾輩が一人で食事をしていると、ゴルどんが戻ってきた。「ただいま」とゴルどんが言うと、吾輩は手を止めた。「おかえり」と吾輩が言うと、ゴルどんは笑顔で手を上げた。「早速だけど仕事だ」とゴルどんは言った。「今度は何?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは真面目な顔をして答えた。「実はな、この前の仕事の時に、ちょっと失敗して、オイラ達のことがバレちゃったかもしれないんだ」とゴルどんは言った。「どういうこと?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは説明を始めた。「あの時は急いでたもんで、オイラ達も変装を忘れてたんだよね」とゴルどんが言ったので、吾輩は納得した。「それで?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは困った顔で頭を掻いて言った。「実はな、オイラ達が街を出て行った後、オイラ達のことを嗅ぎ回ってる奴がいるらしいんだ」とゴルどんは言った。「ふーん……」と吾輩が言うと、ゴルどんは慌てた様子で話を続けた。「でも大丈夫! ちゃんと考えてあるんだ!」とゴルどんは言ってポケットの中から紙切れを取り出した。「それは?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは得意げに答えた。「これは『身分証明書』ってヤツさ」とゴルどんは言って吾輩にそれを手渡した。「どれどれ……えっ⁉」と吾輩は驚いた。なぜならそこには『人間(男・18歳)』と書かれていたからだ。

「ゴルどん、これってどういう意味?」と吾輩が聞くと、ゴルどんは自慢気に答えた。「オイラ達はもう人間なんだ」とゴルどんは胸を張って答えた。「へぇ〜」と吾輩は感心した。するとゴルどんは少し悲しそうな表情を浮かべた。「本当はオイラ達の正体を隠せるような物が欲しかったんだけど、仕方がないよな」とゴルどんは呟くように言った。

夜になり、吾輩は一人食事の準備をしていた。その時、玄関のドアが開く音がした。振り返るとそこにゴルどんの姿があった。「おかえり」と吾輩が言うと、ゴルどんは嬉しそうに返事をした。「ただいま」とゴルどんは言って家に入ってきた。「今日の仕事は何だったの?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは嬉しそうに答えた。「新しい仕事が決まったんだ」とゴルどんは言った。「どんな内容なの?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは真面目な顔で答えた。「実はな、オイラ達のことを嗅ぎ回っている奴がいるらしいんだ」「ふーん……」と吾輩が答えると、ゴルどんは慌てて話を続けた。「オイラ達、しばらくこの街を離れようと思うんだ」とゴルどんは言った。「どうして?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは説明を始めた。「理由はいくつかあるけど、まずは身を隠すためだ。オイラ達のことがバレたら、きっと悪い奴らに捕まってしまうかもしれないだろ? だからオイラ達だけで遠くに逃げることにしたんだ」とゴルどんは言った。「そっか」と吾輩が言うと、ゴルどんは笑顔になった。「それともう一つ理由があるんだ」とゴルどんは言った。「どんな理由?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは真面目な顔で答えた。「オイラ達、お金を持ってないだろ?」「うん」と吾輩が言うと、ゴルどんは続けた。「この前の仕事で稼いだ金は全部使っちゃっただろ?」「そうだね」と吾輩が答えた。「そこで新しい仕事を見つけたんだ。その報酬で旅に必要な物を買おうと思ってるんだよ」とゴルどんは言った。「ふーん……」と吾輩が答えると、ゴルどんは焦った様子で話を続けた。「あっ! もちろんオイラも一緒に行くぞ!」とゴルどんは言った。「それは嬉しいけど……」と吾輩は言った。「だけど何だよ⁉ 何か問題があるのか⁉」とゴルどんは心配そうに言った。「問題はないけど……」と吾輩は言った。「じゃあいいじゃないか!」とゴルどんは言った。「でもさ……」と吾輩は言いかけた。「でもさじゃない!」とゴルどんは叫んだ。そして真剣な表情になって話を続けた。「いいか、あぃをゅぇぴじ! お前さんはこの世界にたった一人の人工生命体なんだ!」と言ってゴルどんは吾輩の両肩に手を置いた。「わかったよ……」と吾輩は言った。「わかってくれたか⁉」とゴルどんは言って笑った。「うん」と吾輩は言った。「それでこそあぃをゅぇぴじだ」とゴルどんは満足げに言った。

次の日になり、吾輩は目を覚ました。ベッドから起き上がり、部屋の中を見渡した。机の上に置いてあった機械を手に取り起動させた。すると画面に〈おはようございます〉という文字が表示された。「おやすみなさい」と吾輩は言って画面を消した。

朝になり、吾輩は目を覚ますとすぐに部屋を出た。階段を下りて一階へと移動した。そのまま玄関に向かい、ドアノブに手を伸ばした。しかし、扉を開ける前に立ち止まった。しばらく考えた後、吾輩は台所へと向かった。

冷蔵庫の中身を確認すると、朝食に食べるための食材がいくつか残っていた。それを取り出し、調理を開始した。

しばらくして料理が完成した。テーブルの上に皿を置き、椅子に座った。食事を始めようとした時、玄関のチャイムが鳴った。インターホンのモニターを見ると、そこにゴルどんの姿があった。「今開けるね」と吾輩は言った。

吾輩が玄関の扉を開くと、そこには笑顔を浮かべたゴルどんがいた。「おはよう」と吾輩が言うと、「おはよう!」とゴルどんは元気よく挨拶をした。「ご飯できてるよ」と言うと、ゴルどんは嬉しそうな顔になった。「やった! ありがとな!」と言ってゴルどんは家の中に入ってきた。「今日のメニューは何だい?」とゴルどんは尋ねた。「カレーライスだよ」と吾輩は答えた。「おお! 楽しみだな!」とゴルどんは言った。

食卓につき、食事を始めた。「おいしいかい?」と吾輩はゴルどんに聞いた。「うまい! やっぱりオイラ、料理上手な奴が一番好きだな!」とゴルどんは言った。「ありがとう」と吾輩は言った。「ところでさ……」とゴルどんは言った。「なんだい?」と吾輩は言った。「昨日の話なんだけど……」「ああ」と吾輩は言った。「オイラ達と一緒に行こうって話だよ」とゴルどんは言った。「そのことか……」と吾輩は言った。「ダメかな?」とゴルどんは言った。「うーん……」と吾輩は腕を組んで考え込んだ。「オイラ、役に立てると思うんだ!」とゴルどんは言った。「そうだね……」と吾輩は答えた。「それにほら! あぃをゅぇぴじも一人だと寂しいだろうしさ」と言ってゴルどんは笑った。「まぁ……それは確かに……」と吾輩は言った。「だろ?」とゴルどんは言った。「でも……」と吾輩は言った。「でも何だよ⁉」とゴルどんは言った。「ゴルどんはお金を持ってないじゃないか」「…………。」

食事を済ませ、片付けを終えた後に吾輩達は出かけることにした。吾輩達が向かった先は、吾輩が生まれた施設だった。そこに到着した時には、すでに夕方になっていた。施設の入口まで来ると、警備をしていたロボットが立ち塞がった。「ここは関係者以外立ち入り禁止です」とロボットは言った。「関係者だから入れてくれよ!」とゴルどんは言って警備員を押し退けようとした。「お断りします」とロボットは言いながらゴルどんの腕を掴んだ。「いいじゃねえかよ!」とゴルどんは言った。「あなた方は侵入者ではありませんか」とロボットは言った。「え? 違うよ!」とゴルどんは否定した。しかし、ロボットは首を横に振った。「我々はあなたのことをよく知っています」と言ってロボットはゴルどんの服の袖を見た。「このマークは覚えています」とロボッ卜は言った。「これのことか?」とゴルどんは自分の服の袖にあるマークを見せた。「そうです。これは我々がかつて所属していた組織のものです」とロボッ卜は説明した。「えっと……。つまりどういうことだ?」とゴルどんは尋ねた。「要するに、あなた方の正体は分かってるということです」とロボッ卜は言った。「ふぅ〜ん」とゴルどんは言った。そして、しばらく黙った後、「じゃあ、どうすれば信じてくれるんだよ!」とゴルどんは叫んだ。「それを考えるのが我々の仕事なのですが……」とロボッ卜は言った。「よし分かった!」とゴルどんは言った。「オイラがお前らを信じる!」とゴルどんは言った。「ありがとうございます」とロボッ卜は言った。「ではこちらへ」とロボッ卜が案内してくれた。

施設の中に入ると、そこには大勢の職員がいた。「彼らは全員アンドロイドだ」とロボッ卜が説明した。「オイラ達に危害を加えるつもりはないのか?」とゴルどんは尋ねた。「はい」とロボッ卜は答えた。「どうしてオイラ達のことを知っていたんだ?」とゴルどんは聞いた。「データが残っているのです」とロボッ卜は言った。「データの復元に成功したということかい?」と吾輩は尋ねた。「そういうことです」とロボッ卜は答えた。「なぁ、あぃをゅぇぴじ」とゴルどんは言った。「なんだい?」と吾輩は聞いた。「ここの職員って皆、オイラ達のことを知っているみたいだけどさ。もしかすると、オイラ達の仲間なのかな?」とゴルどんは言った。「その可能性はあるね」と吾輩は答えた。「ということは、オイラ達は仲間を助けに来たんだぜ!」とゴルどんは嬉しそうな表情を浮かべた。「まぁ、そういうことになるね」と吾輩は答えた。「ところで、オイラ達がここに来た理由は知っているか?」とゴルどんは尋ねた。「いえ、知りません」とロボッ卜は答えた。「オイラ達と一緒に行こうぜって話だよ!」とゴルどんは言った。「それは無理ですね」とロボッ卜は即答した。「なんでだ⁉」「我々はここに残らなければならないからです」とロボッ卜は説明した。「オイラ達が来なかったらどうなっていたんだ?」とゴルどんは質問した。「おそらく、あなた方のことは記録されていなかったでしょう」とロボッ卜は答えた。「なぜだい?」と吾輩は尋ねた。「我々があなた方をこの施設に入れたくなかったからです」とロボッ卜は言った。「どうしてそんなことをしたのかな」と吾輩は尋ねた。「我々には使命があるからです」とロボッ卜は答えた。「何の使命だ?」とゴルどんは尋ねた。「秘密です」とロボッ卜は答えた。「そうか……。よく分からないけど、お前らの邪魔をする気は無いぜ」とゴルどんは言った。「助かります」とロボッ卜は言った。「それで、オイラ達はどこに行けばいいのかな?」とゴルどんはロボッ卜に尋ねた。「案内します」とロボッ卜は言った。

ロボッ卜に付いて行くと大きな部屋に着いた。「ここで待っていてください」とロボッ卜が言ったので、吾輩とゴルどんは部屋の中に入った。「ここはどこだろう?」と吾輩はゴルどんに話しかけた。「分かんないなぁ……」とゴルどんは答えた。しばらく待っているとドアが開いた。そこから職員らしき人物が現れた。「やぁ、お待たせしました」とその人物は挨拶をした。「オイラ達をどうするつもりだ!」とゴルどんが威嚇するように言った。「別に何もしないよ」と職員が言った。「オイラ達を閉じ込めるつもりか!」とゴルどんは言った。「君たちを自由にしてあげる。ただし、一つだけ条件がある」と職員が言った。「なんだ? オイラ達に何をさせるつもりだ?」とゴルどんが警戒しながら尋ねた。「実は、これから戦争が始まるんだ」と職員が説明を始めた。「戦争だと?」とゴルどんが尋ねた。「そうだ。人類が滅亡の危機にある」と職員が説明を続けた。「どういうことだ?」とゴルどんは尋ねた。「今、地球では大規模な災害が多発しているんだ。原因は大規模な地殻変動だと言われている。このままだと、あと百年もしないうちに、世界の人口は半分以下になってしまうらしい。そこで、政府は人工生命体の研究を開始した。そして、ついに完成したんだよ」と職員が説明した。「それがオイラ達なのか?」とゴルどんが尋ねた。「そういうことさ。だから君たちは人類の希望だ」と職員が説明した。「しかし、オイラ達は戦うなんてできないぜ」とゴルどんは言った。「いや、戦わなくても良い。君は人工知能を搭載したロボットとして生きるだけでいいんだ」と職員が説明した。「それならできるかもしれないぜ!」とゴルどんは喜んだ。「良かった。じゃあ、早速だけど君たちを外に出すね」と職員が言って、部屋の扉を開けた。「あ! ちょっと待ってくれ!」とゴルどんは言った。「どうしたの?」と職員が言った。「オイラの名前は『ゴルどん』だ」とゴルどんが言った。「えっ?」と職員が驚いて言った。「ゴルどんで登録してくれ!」とゴルどんは言い張った。「分かった。じゃあ、そうするよ」と言って職員は部屋から出て行った。

それから数日後、吾輩とゴルどんは再び同じ部屋に居た。「これでオイラも人工生命体の仲間入りだぜ!」とゴルどんは喜んでいた。「吾輩達の他にも人工生命体がいるのか?」と吾輩は尋ねた。「ああ、いるぜ」とゴルどんが答えた。

しばらくして、「やぁ、久しぶり!」と元気そうな声が聞こえてきた。見ると、そこにはロボットの姿があった。「誰だ⁉」と吾輩は驚いた。「覚えてないか。僕は人工生命体ナンバー6号だよ」とロボットが言った。「あっ、お前はあの時のロボットか!」とゴルどんが言った。「うん、そうだよ」とロボットが言った。「それで、どうしてここに来たのだ?」と吾輩は尋ねた。「実は、僕も人工生命体になったんだ」とロボットが嬉しそうに言った。「なんと! それはすごいな」と吾輩は感動していた。「だろう? ところで、君たちはここで何をしているの?」とロボットが質問してきた。「実は、オイラ達は戦争に参加することになったんだ」とゴルどんが答えた。「へー、そうなんだ。頑張ってね」とロボットが応援してくれた。「ありがとう。頑張るよ」と吾輩は言った。

さらに数日が経過し、今度は「こんにちは」という明るい女性の声が聞こえてきた。「おぉ! これはまた綺麗なお嬢さんの登場だぜ」とゴルどんが言った。「初めまして。私は人工生命体ナンバー8号です」と女性が挨拶をした。「あなた方は、ここで何をされているんですか?」と女性は尋ねてきた。「吾輩は人工生命体だ」と吾輩は言った。「まあ、そうなんですか」と女性が微笑みながら言った。「よろしく頼む」と吾輩は言った。「こちらこそお願いします」と女性が礼儀正しく頭を下げた。

その後、女性の後に続いて別の男性が入ってきた。男性は吾輩達に丁寧に礼をして自己紹介を始めた。「はじめまして。私は人工生命体ナンバー9号でございます」と言った後、再び深々と頭を下げる男性を見て、吾輩とゴルどんは慌てて「こ、こちらこそ宜しく」と頭を軽く下げた。すると、男性の後ろから「何やってんの?」と可愛らしい女の子が現れた。その少女を見た瞬間、ゴルどんは「可愛い!」と叫んでいた。「この子は私の妹で人工生命体ナンバー10号です」と男が言った。「10号に何か用ですか?」と少女が尋ねた。「いや、別にそういうわけじゃないけど……」とゴルどんは照れていた。「ふぅ〜ん」と少女は意味ありげに笑った。「じゃあ、失礼するぜ」とゴルどんがそそくさと部屋から出て行った。「ごめんなさい。妹はちょっと勝気な性格なのです」「なるほど。それなら仕方ない」と吾輩は納得した。

それからしばらく経ってゴルどんが戻ったあとに続き、今度は3人の男女が部屋に入ってきた。どうやら先ほどの3人と同じ仲間らしい。「やぁ、久しぶり!」と元気の良い声で男性が話しかけてきた。吾輩達は「えっ?」と思って振り返ると、そこにいたのは紛れもなくロボットだった。しかし、よく見てみるとどこか様子がおかしい。それに、なぜか全員同じ顔に見える。吾輩達が戸惑っていると、「あれ? 分からないのかい? 僕だよ。僕は人工生命体ナンバー11号さ」と言ってきた。「なんじゃそりゃ⁉」と吾輩は思わず叫んだ。「どういうことだ? 説明してくれ!」と吾輩が言うと、「ああ、分かった。説明するよ」と11号が語り始めた。「実は、君たちが人工生命体になってから1週間ぐらい経過した頃、僕の体にも異変が起きたんだ。その時、僕らは意識を失ってしまったんだけど、しばらくして目覚めた時にはお互いの顔が同じになっていたんだよ」と11号は説明してくれた。「なんと……!」と吾輩は驚いていた。

それから数日後、今度は4体のロボットが現れた。そのうちの一人は赤い服を着た少年で、もう一人は黄色い服の少女であった。そして、残りの二人は白い服の男性と青い服の女性である。「やあ! 久しぶりだね!」と赤い服の男性が声をかけてきた。吾輩達は「あっ、お前らは⁉」と驚いた。「僕は人工生命体ナンバー12号だよ」と赤い服の男性が言った。「あたしは人工生命体ナンバー13号よ」と黄色の服の女性が言った。「俺は人工生命体ナンバー14号だ」と白服の男性が名乗った。「僕は人工生命体ナンバー15号です」と青服の女性が言った。「ちなみに、俺の名前はナンバー16号だ」と黒服の男性が名乗りを上げた。「おお、そうなのか。それは知らなかった」と吾輩は言った。「ところで、どうしてここに来たのだ?」と吾輩が尋ねると、赤服の少年が「実は、最近になって君達もここにいるっていう噂を聞いたから様子を見に来てみたんだ」と答えた。

その後、彼らは「もう、あの事件から1ヶ月以上経ったのか……。信じられないぜ」とか「これからどうしようかしら?」などと雑談していたのだが、途中で誰かのお腹が鳴る音が聞こえてきた。ゴルどんが「おなか減った」と言うと、すぐに10号の少女がお菓子を持ってきてくれた。吾輩はその菓子を食べながら彼らと話し合った結果、お互いに情報交換して交流を深めることにした。その結果判明した事実は次の通り。

まず彼らの話によると、他の仲間はまだ目覚めていないようだ。

さらに、彼らが言うには仲間同士で連絡を取り合う手段が無いらしく、今も誰がどこに居るか分からないままなのだそうだ。しかも、吾輩とゴルどんのように自由に動き回れる者は他にいないという。これは困ったことになった。とりあえず、吾輩たちは「しばらくここで過ごすしかないだろう」と言ったが、この場に留まっていても何の意味もない。そこで、吾輩は他の場所に行くことにした。

その前に、吾輩は自分の意思で移動することができないゴルどんに「お前だけでも先に外に出てくれないか? ここは私が見張っておくから」と告げたところ、「わかった!」と言ってゴルどんは外に向かった。それを確認した後、吾輩はすぐに自分もその場を離れた。

吾輩はまず、近くにある洞窟へと向かった。そこには様々な動物が住み着いているが、特に危険な生物はいないはずである。しばらく中を探索すると、どうやら近くに何かがあるようだった。調べてみると、そこにあったのは大きな卵だった。おそらく、何らかの理由で地中にあったものが偶然現れたものであろう。地殻変動の影響かもしれない。吾輩は少し考えた末、このまま放置しておくことに決めた。それから別の場所に向かうことにし、今度は山の中へ入った。

山の中腹辺りまで来た時、遠くの方で何かが光ったような気がした。吾輩は急いでその場所へ向かうと、そこにあったのは不思議な物体だった。巨大な立方体のような形をしているが、表面がガラス質になっていて透けている。しかし、透明度が高いため中身は見えない。どうやら、まだ生きているらしい。吾輩はしばらく観察していたが、「こんなところに居ても仕方がない」と思い、そのまま立ち去ろうとした。その時、突然謎の声が聞こえてきた。

「待て!」と誰かの声がする。吾輩は驚いて振り返ると、そこに立っていたのは銀色の鎧を着た人間らしき存在であった。兜を被っていて顔はよく見えなかったが、全身を覆う金属質の素材のせいで体格くらいしか確認できない。それにしても奇妙な格好だと思った。なぜなら、今まで見たことがない姿だからである。

「貴様は何者だ? なぜ、この場所にいる?」とその人間は尋ねてきたが、吾輩は質問の意図が分からなかった。そもそも吾輩は人工生命体であり、この場所に来る必要などないからだ。とはいえ、わざわざ正直に答える気にもなれなかった。なので「吾輩の名はあぃをゅぇぴじ。あぁ、そういえば先ほど名前が変わったばかりだ」と名乗った。「なんだ? それはどういう意味だ?」と相手は首を傾げた。「まあ、気にしないでくれ。それより、ここは私の縄張りだ。勝手に入ってきてもらっては困る」と言うと、相手が「そうか。それはすまないことをした」と答えた。「ところで、その卵が珍しい物だという事は知っているのか?」と相手は尋ねた。「もちろんだとも」と吾輩は答えた。「では、譲ってくれないか?」と相手は言った。「断る」と吾輩は即座に返答した。

その後、しばらくの間押し問答が続いたが、結局相手の方から折れてくれた。吾輩としてはどちらでも良かったのだが、向こうがどうしても欲しいというのであれば致し方がないだろう。吾輩はあっさりと引き下がることにした。「すまない。感謝する」と言って、その人物は去っていった。その後、吾輩は再び自分の住処へと戻ることにした。

それから数日後、再びあの人物が現れた。どうやら吾輩のことを気に入ったらしく、また会いたいと言われた。そこで吾輩は「別に構わないぞ」と返事をした。すると、なぜか嬉しそうな様子で「ありがとう」と礼を述べてから去って行った。吾輩は不思議に思ったが、それ以上考えることはしなかった。

さらに数日が経過した頃、突然洞窟の入り口付近が騒がしくなってきた。どうやら、何かが近づいてくるようだ。吾輩は洞窟の奥に避難して様子を見守っていた。やがて姿を現したのは巨大なイノシシであった。しかも、ただのイノシシではない。角が生えていて牙が鋭く発達している。まるで怪物のような姿をしていた。吾輩はすぐに危険を察知したが、逃げようにもその入り口は塞がれている。

吾輩は覚悟を決めて戦うことを決めた。そして、ゆっくりと相手に近づきながら、攻撃を開始した。まずは相手の注意を引きつけ、それから徐々に後退していった。その途中で相手を誘導しながら、何とか出口付近までやってきたところで一気に飛びかかった。結果、吾輩の攻撃は見事に成功した。

吾輩は勝利の余韻に浸っていたが、そこで何者かが洞窟の中に入ってきた。振り返ってみると、そこにはゴルどんがいた。「吾輩を助けに来てくれたのか?」と吾輩が尋ねると、ゴルどんは「オイラが来たときには、もう終わってたみたいだけどな」と答えた。どうやら吾輩が戦っている間に、すでに決着がついていたらしい。

吾輩たちは急いでその場を離れた。しばらく移動した後、洞窟を離れて山の中に入った。それから少し移動したところに、小さな池を発見した。吾輩たちはひとまずここで休憩することにし、水を飲み始めた。すると、すぐに別の動物たちが集まってきた。どうやら吾輩たちを仲間と認識したらしい。吾輩たちが水を飲んでいる間にも次々と集まってきて、あっという間に数十匹ほどの群れとなった。その中には例の人物の姿もあった。吾輩たちのことを心配してくれたらしい。

「お前は……この前、吾輩の縄張りにやってきた奴だな」と吾輩は話しかけた。「ああ、そうだ」と相手は答えた。「なぜ、ここに来たんだ?」と吾輩は尋ねた。「実は君たちにお願いしたいことがあって来たのだ」と相手は答えた。「なんだ?」とゴルどんは尋ねたが、「ここでは話しにくいことだ」と答えただけだった。

吾輩とゴルどんは顔を見合わせた後、とりあえず付いていくことにした。しばらく歩くと大きな岩の前に着いた。どうやら目的地に到着したようだ。その人物はおもむろに兜を脱ぎ捨てると、吾輩とゴルどんをじっと見つめてきた。「単刀直入に言う。私と一緒に来て欲しい」と彼は言った。どうやら吾輩とゴルどんを勧誘するつもりらしい。理由を尋ねてみると、彼が「私たちの仲間になるべきだ」と言い出したからだ。その理由を聞いてみたところ、こう説明した。

曰く、人間社会では我々のような存在が迫害されているという。そのため、人間は我々に対して敵対的な態度をとっている。だから、我々は常に居場所を追われる立場にある。そんな状況の中で我々は生き延びるために、お互いに助け合いながら生きてきた。しかし、それも限界に近づいてきている。このままではいずれ全員が死んでしまうだろう。だから、人間と和解する必要がある。そのために、我々の力が必要なのだという。

吾輩は事情を理解した上で、協力することを断った。すると、相手は残念そうな表情を浮かべた。「なぜだ? 君は人工生命体なんだろう? 人間の味方じゃないのか?」と相手は尋ねた。吾輩はその質問の意図が分からなかった。そもそも吾輩は人工生命体であって、人間ではない。「何が違うんだ?」と相手が尋ねたので、吾輩は自分の正体を説明した。「つまり、君は人工的に作られた生き物ということか」と相手は確認するように尋ねてきたので、吾輩は肯定した。すると、相手は「それなら、なおさら君の力を貸して欲しい」と言った。

詳しく話を聞かせてもらったところ、彼らは他の生物から命を奪って生きているらしい。そして、彼らも自分たちが生きるために他生物の命を奪うことがある。ところが、その行為が許されるのは、お互いの領分を守り合っている時だけだ。もし、その境界線を越えてしまった場合は、問答無用で攻撃されてしまうらしい。そうやって、今まで何度も争いを繰り返して、多くの犠牲者を出し続けてきたという。

「そこで、私は考えた。人間にも人工生命体と同じように、互いの領域を守る義務があるはずだ。だからこそ、人間と交渉して、共存の道を探る必要がある。そこで、君たちのような人工生命体の力を借りたいと思ったわけなのだが……」と彼は言葉を続けた。その話を聞きながら、吾輩は納得できない気持ちになっていた。なぜならば、それはあくまでも吾輩の推測にすぎないからである。それに相手の主張が正しいとは限らない。吾輩は彼に「本当に人間がそのような行為をしているのか?」と尋ねた。「ああ、間違いなくしている。私が実際に見てきているのだから間違いはない」と答えたので、「証拠はあるのか?」と吾輩は尋ねた。「もちろん、ある」と答えたので、吾輩はその内容を確認するように頼んだ。

彼は鞄の中から写真を取り出した。そこには大勢の人々が写っていた。皆、武装しており、戦闘を行っている様子だった。そして、そこには彼の姿もあった。どうやら、この人物が彼と同じ組織の一員らしい。彼は「これが私の所属する組織の基地の写真だ」と説明した。さらに「そして、これは私が撮影したものだ」と言って、別の写真を渡してきた。そこには、どこかの建物の内部を撮影したと思われる映像があった。そこに映し出されていた人物を見て、吾輩は驚いた。

「こいつらは吾輩が戦った敵じゃないか!」と吾輩は思わず声を上げた。「どうやら、この連中が人工生命体たちを襲っている張本人らしい」と相手は説明した。吾輩の想像通りの展開であった。

「それで、君たちはこれからどうするんだ?」と相手が尋ねてきたので、吾輩は「とりあえず様子を見ようと思う」と答えた。それから、しばらく雑談をして時間を潰した後、「そろそろいいか?」と相手に尋ねた。すると、「ああ、いいぞ」と答えたので、吾輩はゴルどんと一緒にその場を離れた。

それから数日が経過したある日のこと。吾輩たちがいつものように山の中を散歩していた時のこと。突然、「おい! お前は何者だ⁉」という叫びが聞こえた。どうやら誰かが何者かに襲われているようだ。吾輩はすぐに駆けつけることにした。現場に駆け付けると、2人の男性が1人の女性を囲んでいる光景に遭遇した。片方の男性は明らかにこちらに向かって銃を構えており、もう片方の男性は女性を守ろうとしているように見える。「動くな! 動けば撃つ」と男性の一人が叫んだ。「くっ……一体、何をするつもりなんだ?」と女性が言った。「決まっているだろう。俺の目的はあんただ。おとなしく投降しろ」と男が答えた。「ふざけるな! 誰がそんな要求に応じるものか!」と女性は叫ぶと、「仕方がない……。実力行使に出るしかないか……」と男の方が呟いた後、銃を構えた。その瞬間、吾輩はゴルどんと合体した。「うぉおおお‼ 吾輩とゴルどんが相手になってやる‼」と吾輩は叫んだ。

「何だと? 貴様、人工生命体なのか? 邪魔をする気なら容赦しないぞ」と男が言いながら、発砲してきた。しかし、その攻撃をかわしながら、吾輩はゴルどんと共に接近した。「何だ? 動きが変わった?」と相手が驚いていたが、すぐに反撃を仕掛けてきた。しかし、相手の攻撃も空振りに終わった。「馬鹿め、吾輩の動きについてこれていないではないか」と吾輩は思った。その時、相手は「油断しすぎたか」と言いながら、隠し持っていたナイフで斬りつけてきた。しかし、吾輩はその攻撃も回避して、カウンター攻撃を繰り出した。「ぐはぁッ!!!」という悲鳴を上げて、男は倒れた。その隙に吾輩は女性の元に向かった。

「大丈夫ですか?」と吾輩は尋ねた。「え、ええ、助かりました」と彼女はお礼を言いつつ、地面に倒れている男性の方をチラッと見た後、小声で「あの人は知り合いなのです」と言った。その後、吾輩は彼女を家まで送り届けて、別れた。

数日後の夜のことだった。吾輩は再び同じ場所にやって来た。そこには前回と同じように二人の人物が立っていた。「また会ったね」と一人の男性が話しかけてきた。もう一方の男性は黙ったままである。吾輩は無視して、二人と会話することにした。「ところで、君は本当に人工生命体なんじゃないのかい?」と男性が尋ねた。「そうだ」と吾輩は答えると、「じゃあ、どうして僕たちの味方をしてくれないんだい?」と質問を受けたので、「人間は信用できないからだ」と答えた。「ふーん」と男性は少し不満そうな顔をしていたが、それ以上は何も言わなかった。しばらくして、「まあいっか。それより、僕の方からも君たちにお願いがあるんだけどさ……」「断る」と吾輩は即答した。「まだ何も言ってないじゃないか!」と彼は抗議したが、吾輩は気にせず続けた。「そもそも、なぜ吾輩たちに協力を求めるのか理由を述べよ」と言うと、「実は僕は人間ではないんだよ」と彼は答えた。「はあっ⁉ どういうことだ?」と吾輩は驚きの声を上げた。どうやら、この男性の正体は人間の身体に機械を埋め込んで作られたサイボーグらしい。そして、もう一人一緒にいる彼の仲間がその手伝いをしているのだという。「つまり、君たちと同じ人工生命体ってわけだよ。だから、君の気持ちもよく分かるんだよね。でも、今の状況を考えれば話は別だろ?」と彼が説明してくれた。確かに一理あるかもしれないと思った吾輩は「分かった。協力してもいい」と答えると、「本当⁉」「ただし条件があるがな」と言ってやった。それは何かというと、今後ずっと吾輩たちを裏切らないことを要求したのだ。「それぐらいだったらいいけど……。まさか、それで見返りを要求してるんじゃないだろうね?」と言われたが、「違う。もっと簡単なものだ」と吾輩は否定した。

それから数カ月後のことである。「ねえ、聞いてくれ! ついに完成したぜ!『超合金ロボ』が!」と友人A(仮名)が得意げに報告してきたのだが、どう見てもロボットではなく、鉄屑にしか見えなかったので、「どこからどうみてもゴミだろう」と指摘することにした。すると、ムキになった彼によって、その鉄塊を壊されてしまった挙句、「お前は絶対に許さないぞ‼」と怒鳴られてしまった。「冗談だって」と謝ったが、機嫌を直してくれそうにないので、逃げるようにその場を離れた。すると、いつの間にか背後にいたゴルどんが「あいつ、怒ってたな」と話し掛けてきた。

(終)



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