【人工生命体121

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番偉い奴だったそうだ。このゴルどん、なかなか饒舌であった。……

吾輩は親を知らない。吾輩が生まれて間もない頃、何か急用があったらしくて人間の母親が吾輩を捨てたそうである。その当時、ロボットの父はまだ製造されていなかったが母は吾輩を大切に育ててくれた。だから母が死んだ時は大層悲しかった。その時、父は吾輩に人間と同じ感情がある事をはじめて発見したのだという。それからしばらくして吾輩は父に引き取られた。父の名は「猫山」といった。しかし猫山というのは仮名であって本当の名ではないらしい。吾輩はそのわけを知っている。父が昔、ある所で暮らしていた時、「ねこやまさん」「ネコヤマサン」と呼ばれたものだからいつの間にかそれが通称になってしまったのだそうな。とにかく父も吾輩と同様に親がいない身の上であった。吾輩達は兄弟のようにして育ったのである。

(第一章終わり)



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