【人工生命体156

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番怖しい奴であったそうだ。このゴルどん、全身さび付いている上に眼からは赤い火花が出ている。口には牙がある。背中には剣を背負っている。おまけにへんな尖った帽子をかぶって御馳走を食べている。どうも食うためでなく飾りのために着ているらしい。これはかなり不気味な存在だ。吾輩は心の中で叫んだ。(怖い! 怖い! 助けてくれ!)

ところがどっこい! 吾輩の心の声を聴いたのか聴かなかったのか知らんがそのゴルどんがいきなりギラリと光る剣を抜いてピョンピョン跳ねる小さな物体を串刺しにしたではないか。

吾輩はその光景を見て恐れ入った。何とも凄い迫力だったからである。よく見るとゴルどんの体は鉄で出来ていた。つまりロボットなのだ。その証拠に口から炎を吐いている。吾輩はこれでも理科の授業を受けているからロボットについては多少の知識があった。けれども実物を間近に見るのはこの時が初めてだ。だから吾輩は驚いた。同時に感嘆の念を抱いた。人間というのは本当に利巧なものを作ったものだと思ったからだ。その後いろいろ知識を得てみると人間は昔々宇宙の星から地球にやってきたのだという事がわかった。そこでまた吾輩は驚いた。あの小さい物体こそ宇宙人だったという事をそのとき知ったからである。それならゴルどんの姿形や大きさが普通の人間の数倍もある事も説明がつく。なるほどなぁ。しかしそれにしてもゴルどんは恐ろしい姿形をしている。あんなものに襲われたら一たまりもないぞ。やっぱりゴルどんが一番強いんだ。きっとそうなんだ。

(終)



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