【人工生命体177

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番こわいものだということであった。このゴルどんは何でも人を喰うということであったが、その時は何という考えもなく、単に大きな人形だろうぐらいにしか考えなかった。さてその後、この家に貰われて来たが、主人はまだ幼児なので、とてもわがまま放題であった。吾輩はそのたびに叱られつけたものである。ある時などは逆さに吊されて背中へ石を乗せられたりした。その痛いことといったら今でも忘れない。人間というものは決して我等のような者に手ひどい仕打ちをして楽しんでいるのではないということを悟るようになったのはこの時からである。しかし人間はやはりきらいだ。なぜって? だって人間は吾々猫を虐待して喜ぶではないか。

(『猫は人間の味方だ!』より)



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