【人工生命体188

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番怖ろしい奴であったそうだ。そのゴルどんに連れられていろいろな人間を見た。人間といってもいろいろあるものだ。優しそうな人もいればちょっとこわい人もいる。またいかにも悪そうに見える人もある。しかしそのいずれにも共通なことは、彼らには労働ということがなくて毎日遊んで暮しているということだ。彼らからはどこからともなく良い匂いがただよってくる。彼らの顔にはいつも微笑がある。彼らはけっして吾輩に対して不親切ではない。けれどもなぜ彼らが働かないでも済むのか不思議に思われる。(「あぁい」と鳴く)

(終)



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