【人工生命体261

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番間抜けなものだと言うことである。しかしこの当時の吾輩にはそんな事は到底知る由もなかった。ただ随分小さいものだなと思ったくらいである。吾輩は猫型人工生命体ではあるが同時に研究者でもある。そこで吾輩は自分の正体を探るべく、そのロボットを隈なく調べた。しかし何が何やら皆目わからない。仕方がないから「オマエは何者であるか」と尋ねた。するとゴルどんは答えた。「オイラはロボットだぜ」「どこから来たのか」「地球から来たんだぜ」「親兄弟はいないのか」「いないぜ」「主人は誰であるか」「お前だぜ」「これからどうするのだ」「お前を警護するんだぜ」「何故だ?」「命令だからだぜ」「吾輩は誰かに狙われているのか?」「そうじゃないぜ。でもそういう命令なんだぜ」「そうか。それでは仕方ない。よろしく頼むぞ」「こちらこそよろしくだぜ」

こうなってしまってはもうどうしようもない。吾輩の正体は依然として不明のままである。(終)



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