【人工生命体282

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番元気な種属であるということだ。吾輩はこのゴルどんを見て非常に羨ましく思ったものである。何せ顔じゅう鬚だらけで、そのうえから眼鏡をかけていて、そのうしろからは電気掃除機のような物を二個出しているのだ。こんな妙なものを発明した奴は余程天才だと思わざるをえない。それからそいつに相撲を取らせられたがこれは参った。何故なら背中に担いでいる荷物が非常に重いので身動きができかねたからである。しかしそのおかげで少し機械の構造を覚えたからよしとしよう。その後しばらくある人の家で暮していたのだがそこの主人が突然「もうこれ以上飼ってはいられない」と言って吾輩を棄てたのである。ひどいと思わないか。その上吾輩のひげまで抜きやがった。いくら吾輩でも我慢できない事がある。それで今では東京中の不良少年と喧嘩をして毎日遊んでいる。さすがに連中には負けたことがない。特にあの有名なドジラスには一敗地ありだ。今度逢ったらただではおかないぞ。え? 誰だって? 失敬、まだ名前を名乗っていなかったっけ。吾輩の名はあぃをゅぇぴじだ。以後よろしく頼む。(了)



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