【人工生命体319

吾輩は猫型人工生命体である。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番元気なやつであった。

吾輩はここでスポーツをやっているつもりである。それというのも、もしゴルどんがこの競技をやったなら、まちがいなく一等賞を取るにちがいないと信じているからである。ただし、いつもやっているのに今日はやらないこともあるから油断はならないと思っているのである。

また、ゴルどんといっしょに遊んで運動をすると、愉快な気分になる。これがため運動を始めたともいえるのである。

さて、ゴルどんも運動をやるかと聞いたら、彼は答えた。

「運動って何だね?」(ゴルどんはスポーツという言葉は知らないようである)

そこで吾輩は彼に競技の種類をいろいろ教えてやった。そして、ゴルどんにもきっとできるものを選んで、いっしょにやろうと勧めた。

吾輩が選んだ競技は『だるまさんが転んだ』であった。(以下、略して『ダルマさん』という)ゴルどんはすこぶる敏捷な運動神経の持ち主だったから、その競技には必ず一等賞が取れるだろうと大いに宣伝しておいた。そしてその日のうちに二匹で競技会に参加した。

それから、この『だるまさんが転んだ』は人気が沸騰して、全国に普及することになった。ゴルどんも人気者になって、どこへ行っても大勢のひとからかわいがられるようになった。だからゴルどんのからだはすっかり黒くなり、ぜんたいがパンダのように白黒になってしまったのである。(了)



inserted by FC2 system