【人工生命体4

吾輩は人工生命体である。名前はまだ無い。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番偉いやつであったそうだ。このゴルどんはなぜこうも偉そうにしているのだろうと常々考えていたのだが、その訳がようやく今わかったような気がする。つまりこういうことであろう。

吾輩は先程から「お前は何者だ?」と聞かれる度に、「吾輩は人工生命体である」と答えていた。そしてゴルどんは吾輩のことを「何だ? 人工生命体って……」と不思議そうな顔をして首をひねっていた。それがまた実に可笑しいのだ。

吾輩はこの笑い話を皆にも聞かせてやりたいと思って、急いで帰ることにした。帰る途中、吾輩はふと思いついて、こんなことを言った。「そうだ。吾輩はこれから自分の事を『吾輩』と呼ぶことにしよう」するとゴルどんが「へえっ! どうしてだい⁉」と聞いた。「だって吾輩は人工生命体だからさ」

おしまい

(了)

【完結】



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