【人工生命体417

吾輩は猫型人工生命体である。名前はまだ無い。だが犬型ロボットに名前を問われたので用意することにした。「今日から吾輩は〝あぃをゅぇぴじ〟である」と尻尾をピンと立てた。

このとき吾輩は始めてロボットというものを見たのだが、あとで聞くとそれはゴルどんという犬型ロボット中で一番の大物だそうで、吾輩も家族で散歩をしていたときにはゴルどんとその家族の飼犬とよく衝突していたそうである。だがいくらぶつかっても相手は〝ワンワン〟と鳴くだけだしこちらは痛みも感じないので〝構うものか〟と思っていつもそのまま通り過ぎていたのだが、あのとき吾輩とぶつかっていたのはどうやらゴルどん一家の愛犬の一匹であったらしい。まことに因縁というものは不思議で数奇なものである。

ともかく初めての犬型ロボットからの挨拶に吾輩は「吾輩の名はあぃをゅぇぴじ、猫型人工生命体である」と尻尾を立てて答えた。

またその日の翌日、吾輩は馴染みのおでん屋へ意気揚々と向かっていた。吾輩は秘密任務実行のスペシャリストであった。アクティブに活動することも大切だが、時には心理的な防備を固めるためにも休息を必要とするのだ。というわけで、いつも通いなれた店ではあったが、こうして遠出することも含めて冒険としてとらえつつ吾輩は向かうことにしたのだ。

このようにして吾輩はゴルどんとおでん屋へと向かう途中で偶然に出会ったのだ。出会った最初は少々ぶつかったりもしたが、おでんも旨く平らげた後だし別に気にするほどでもなかろうと放置しておいたのだったが、道を歩くたびに「ウホォーッ」とか「アォーンッ」とかとにかくゴルどんが吠えるので嫌になって逃走することにした。そしてたどり着いたのが猫カフェである。ここで吾輩は一休みすることになったのだ。

これが吾輩の冒険の始まりであった⸺

「ニャァ〜ァ」と欠伸をする吾輩に店員の若い女が「猫さん、起きなさいっ」と言うので仕方なく起きたふりをしておこうと考えた次第だ。ということで今は眠っているというていでご案内することとしようではないか!

吾輩はあぃをゅぇぴじという名前に改名した猫型人工生命体だ。本来は人間と同じように人生を送っていたのだが、諸事情により現在は猫型の疑似生命体として日々を過ごしている。なぜ吾輩がこのようなことをしなければならないのかと言われれば話は長くなるのでまたの機会に説明することにしようと思う。

さて、吾輩はあぃをゅぇぴじという名前に改名してからこの猫カフェには常連として何度も通っている。だいたい週に二回くらいの周期でここを訪れることに決めているのだ。それがこの界隈では最近ちょっとした話題になっているという風の噂も聞いているので尚更である。その話題の主にはこの猫カフェの名物である人間たちが日替わりで相手をしているところもその理由であろう。彼らは自分からは何の役割もなく何も与えずただ一日を過ごすことだけを希望としているそうだが、吾輩に言わせれば実に羨ましい限りである。今日はいったいどんな連中が待ち受けているのか……そんな期待に胸を躍らせながら吾輩たちは店に入っていくのだ。

すると、そこに居たのは我々人工生命体でもロボットでもない謎の生物であったのだ! つまり吾輩はついに人間と対面してしまったのだぁ! それはまさに天から降ってきたような幸運であった。吾輩がさらに驚くべき出来事に出くわすのはそこから一か月後のことであった。また猫カフェに足を運びに来た吾輩はあぃをゅぇぴじという名前に改名したのだが、ここでの出来事もまた驚きと謎に満ちたものであった! 吾輩が考えもつかないような仕組みを彼らは持っているのではないかと推測したのだが、結局は単なる偶然であったのかもしれない。なんにしても吾輩はあぃをゅぇぴじという名前に改名してからというもの、このような深い謎に満ちた数々の体験を通して真の力というものに目覚めたようで、今では自由にあっちへ行ったりこっちへ行ったりと冒険するような日々を送っているのだ。

まったく吾輩もすっかり変わり者になったものである。吾輩はあぃをゅぇぴじという名前に改名したことは今でも嬉しく思っているのだが、そのせいでまたいろいろな者たちとの交流する機会が急速に増えてきて困ってしまっているのだ。しかしまぁ、それも仕方のないことなのである。吾輩はあぃをゅぇぴじという名前に改名してしまったからにはこの先もずっとその名で呼ばれることになるだろうからな! 今までうまくやってきた生き方を変えるということはなかなか大変なことであるなあ、と改めて感じる今日このごろなのだなぁ……ああ……。そんなことはさておき早く次の冒険の支度をしなければならない吾輩なのである。

実は昨日、近所のおでん屋で一休みしたのだが、どうにも身体の調子が良くないのだ。これはどうしたものかと思い悩みながら歩いていたら、そこには見知らぬ土地が広がっていて困っているのだ。吾輩は急いで戻ろうと歩みを進めたのであるが、どこを歩いているのかすら判断ができなくなってしまった! 吾輩は自分の所在を把握している必要があるのでGPSを頼りにしながら旅を続けることに決めたのであった。

だがこれはかなりの緊急事態であると考えられるためここで自己紹介をする必要がありそうであるから、筆を執ることにした次第だ。なお、これは創作エッセイであるため実際の人物名および団体名などは存在いたしませんのでご了承いただきたい。

それでは諸君、吾輩をあぃをゅぇぴじという猫型人工生命体から辿れるようにすると良いだろう! そして吾輩の新たな冒険譚を追うといいだろう! だがそれだけではないっ、更にだっ! あぃをゅぇぴじの行方を追うことも許されるというものであるな。ましてやあぃをゅぇぴじに関して討論することも許されているのであるぞっ! 読者諸君はついて来るがいいっ‼ 合言葉は吾輩あぃをゅぇぴじだっ‼ また、最新話はすでに更新中! 今から読み進めようぜっ‼

あぃをゅぇぴじ(5



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