【人工生命体48

吾輩は猫型人工生命体である。名前はまだ無い。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めてロボットというものを見た。しかもあとで聞くとそれはゴルどんというロボット中で一番えらいやつだという話であった。このゴルどんがまた大きければ大きいほどいいような規則があるらしくて、どのくらいの大きさかというとその時の吾輩と同じくらいだったようだ。そしてなぜだかわからないがその時は気がつかなかったがどうも猫のくせに大きな奴だとその当時は思ったものだ。なぜかというとそのころの吾輩は子猫で目方が非常に軽かったからだ。とにかく吾輩はそのゴルどんの前足の下を通り抜けようとしたところ突然ぱっと目の前が暗くなって何が何だかわからなくなった。次に気がついたときは箱の中に入れられていて、その上を何か大きなものがごろごろ転がっていた。それからしばらくするとどこか遠くの方でどすんというような音がして、それと同時に箱の中の空気が大きく動いた。どうやら吾輩は大きなものに押しつぶされてぺちゃんこになってしまったらしい。しかし幸いなことに命にかかわるほどのことはなかったようですぐに外に出られた。見るとそこは魔王城の中だった。吾輩はすぐに魔王の所に連れていかれた。

魔王は四角くて黒い板のようなものの上に乗っかっていて、それを触ったり叩いたりしていた。「これは一体どういうことなんだ?」と吾輩は尋ねた。「ああこれかい? こいつはテレビと言ってね、こうやって……」と魔王は言いながら手を放すと黒い板はゆっくりと移動を始めた。「こういうことができるんだよ」「なるほど」と吾輩は言った。魔王は説明を続けた。「ところで君はどうしてここにいるんだい? それにここはいったいどこなんだい?」「実は吾輩にもここがどこなのかよくわかりません。ただ吾輩は……………………(中略)」と吾輩はこれまでの経緯を説明した。魔王は熱心に聞いてくれた。「そうか大変だったねえ。それでこれからどうするつもりなんだい?」と魔王は尋ねてきたので吾輩は「吾輩はとりあえず世界を征服するために旅に出ます」と答えた。魔王は少し考えてから「それじゃあ、君の名前は『あぃをゅぇぴじ』というのはどうかな」と言った。吾輩は承諾した。こうして吾輩は「あぃをゅぇぴじ」となった。

(了)



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