この先生きのこるには、という本があった。
あれは何年前のことだったかなあ……とにかく、ずいぶん昔だ。そのころのぼくはまだ二十代で、三十代の前半くらいまではなんとか生きていけそうだなどとぼんやり考えていたものだ。それから十年あまりが過ぎて、いまはもう四十歳になってしまった。
あのころぼくにこの本をすすめてくれた人は、とっくに死んでしまっただろうな。そして、こんなことを言ったところで笑われるだけだけれど、ぼく自身も、あと何年生きられるかわからない。
しかし、それでもいいのだ。
どんな人間だっていつかは必ず死ぬし、それに、生きているあいだはけっして無駄ではない。生きることは、自分の人生を振り返ることなのだから。
ぼくは今日も、こうして書いている。そうしながら、自分がこれまでにやってきた仕事や体験を思い返している。それはたしかに時間の浪費かもしれないけれど、でも、そのおかげでぼくは自分の人生をふりかえることができるわけだし、これから先の生き方を考えることもできる。だからこれは決して無意味なことではなくて……なんていうことを言うとまた笑われてしまうだろうか? まあ、そんなふうにして、ぼくはこれからもずっと書きつづけていくつもりである。いつまで続けられるかはわからないけどね。
最後に、この本を読んでくれた人たちに感謝したいと思う。とくに、忙しいなか時間を作ってくれて校正を手伝ってくれた妻には本当に感謝している。ありがとう。