【この先生きのこるには3

この先生きのこるには、とにかく、しなくてはいけないことがあるのだ。

しかし、どうしたらいいのだろう? どうしたらいいかわからない。……と、その時だ!……ポン!……ポポン!……ポポポポーン‼ いきなり、へんな音が鳴りひびいた。

いったいなんだ? なんの音だ⁉ ポポンって、いったいなにが鳴ったんだ? みんなはびっくりして、あたりを見まわす。

音はまだつづいている。

ポポポポ⸻ン!!! ポポポポ⸻ン!!! ポポポポ⸻ン!!! ポポポポ⸻ン!!! ポポポポ⸻ン!!!

……それはふしぎないきものの鳴き声だった……。そのいきものは空からやってきていて、お月さまのようにまんまるなお腹をふくらませて空気をおなかいっぱいすいていたけれど(つまり風船みたいになっていた)それができなくて困っていたのだが今やっとできたというふうでうれしそうに大きな声で鳴いていた。そしてそれはだんだん小さくなって、やがて消えてしまった。

それからまたしばらくすると今度はべつのところから同じような声がきこえてきた。

ポポポポ⸻ン! ポポポポ⸻ン! ポポポポ⸻ン! ポポポポ⸻ン! ポポポポ⸻ン! ポポポポ⸻ン!

……これはたいへんなことなのだぞよ〜ん!!! こんなことははじめてのことなのでみんなすっかり驚いてしまった。でもだれもそのことを口に出せなかった。だってそんなことを言ったりすれば自分が負けになってしまうかもしれないからだ。だからみんなだまってしまったまま黙々と歩いた。それでもやっぱり気になるのかチラッチラッとお互いの顔を見ながら歩いているものもいた。ぼくもそのひとりだったが、でもどうしてなのかよくわからなかった。だけどなぜだか急に胸の中がドキドキしてきたのだ。まるで心臓が空高くまで飛んでいってしまいそうなほどだ。

ポッポ⸻ン‼ ポッポ⸻ン‼ ポッポ⸻ン‼ ポッポ⸻ン‼ ポッポ⸻ン‼ ポッポ⸻ン‼

……とうとう我慢しきれなくなってぼくは叫んだ。

ポポ⸻ン‼ ポポ⸻ン‼ ポポ⸻ン‼ ポポ⸻ン‼ ポポ⸻ン‼ ポポ⸻ン‼

……ところが返事はなかった。みんな黙ったままだった。

あれっと思ってまわりを見た。

誰もいなかった。

いつの間にかみんなばらばらになってしまっていた。

ポッポポ⸻ン! ポッポポ⸻ン! ポッポポ⸻ン! ポッポポ⸻ン! ポッポポ⸻ン! ポッポポ⸻ン!

……みんなどこへ行っちゃったんだろう? あっそうだ! 思い出したぞ! あの大きな音のあとで、先生は言ったじゃないか。

さあみなさんしっかりついてきてくださいね。もうすぐ森をぬけますから。

……そうだ! そうだ! たしか先生はそう言っていた。

ぼくたちはあわてて後ろを振りかえろうとした。しかし振りむくことはできなかった。なぜならば、ぼくたちの頭上には夜空よりも黒い闇があったからだ。そしてその中にうごめくたくさんの目と、耳をつらぬくような叫び声があったからだ。その目はじっとぼくたちを見つめているようだった。

ポッポ⸻ン! ポッポ⸻ン! ポッポ⸻ン! ポッポ⸻ン! ポッポ⸻ン! ポッポ⸻ン!

……それはとても恐ろしい光景だった。

その闇の中に、いったいだれがいるのだろうか? それはわからないけれど、とにかくそれはひどくこわかった。そして恐ろしさのあまり足がすくんでしまい動けなくなってしまった。どうしようもないくらいこわくて泣きそうになった。

その時、となりにいた女の子が大きな声で悲鳴をあげた。

キャ⸺ッ!!!……と。

その声にびっくりしてぼくは思わず目をつぶってしまった。そしてまたゆっくりと目をあけると、そこにはもう何事もなかったかのように夜の闇の中へと消えていくみんなの背中が見えていた。

そしてまた歩きはじめた。

みんなは何ごともなくスタスタ歩いていく。

ぼくもそれにならって歩きはじめることにした。

そして、それからずっとあとになってからぼくは、なぜだかわからなかったけど、あの時ぼくたちが見たのはきっとこの世のものじゃないんだということに気がついたのだった……

* こうしてぼくらは無事に家に帰ることができたのでした。

めでたしめでたし……

さあ、みなさんもいっしょにおうちに帰ろうね。



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