【桃太郎11

昔々、ある所に、お爺さんとお婆さんがありました。毎日、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

ある日、お婆さんが川に洗濯しに行きました。すると川の上流から大きな桃が流れてきました。「おや? これはまた大きい桃だこと」お婆さんは大喜びしてその桃を家に持って帰りました。そしてお爺さんと共に桃を切り割りました。中からは元気の良い男の赤ん坊が出てきました。二人はこの赤ん坊を桃太郎と呼び、大切に育てました。桃太郎と名付けられたその子もすくすく育ちました。

大きくなった桃太郎は、「俺様はこの家の飼い犬ではないぞ!」と言いながら家を出ました。犬は黙ってそれに従いました。猿も黙って従いました。雉は桃太郎の後を追いました。

しばらく進むと鬼に出会いました。鬼は桃太郎達を見ると襲いかかりました。桃太郎達は逃げ回ります。桃太郎が逃げる最中に石ころを投げたところそれが見事鬼に命中しました。怒った鬼は桃太郎を追いかけ始めました。犬と猿は桃太郎を守ろうとして必死に逃げました。しかし、猿は足を怪我してしまい動けなくなりました。桃太郎は猿の手を引きその場を離れようとしましたが猿は怪我のせいで動こうとしません。仕方なく桃太郎は猿を置いて行くことにしました。猿は泣き喚きながら桃太郎の名を呼び続けました。桃太郎達が先に進むと犬と雉が居ました。犬と雉は何があったのか聞くと、桃太郎は涙を流しながら猿を置き去りにした事を二人に話しました。犬と雉はとても驚きました。

さらに進むと鬼と出会いました。鬼は桃太郎を見つけるなり飛びかかってきました。桃太郎は応戦しますが、相手が悪いため劣勢です。鬼は勝ち誇ったかのように高笑いをしています。犬と雉はそんな桃太郎を見て、鬼に向かって突進していきました。桃太郎は二人の行動の意味を理解したのか、桃太郎自身も鬼へ向かって行きました。犬、猿、雉の見事な連携によりついに鬼を倒す事に成功しました。鬼を倒した後、桃太郎は「俺様にはまだやり残した事がある。まだ死ねないんだ!」と言ってそのまま走り去っていきました。犬と猿と雉はその後を追うように歩き始めました。三人はしばらく歩くと洞窟を見つけました。桃太郎はその中へ入って行きました。犬と猿と雉もそのあとに続きました。しばらくすると奥から何か音が聞こえてきました。どうやら人の声のようです。「もしや……」そう思った三匹は声のする方へ向かいました。

そこには桃太郎の姿がありました。どうやら誰かと話しているようでしたが、その相手は人間ではなく怪物でした。会話の内容を聞く限り、桃太郎が話しているのは目の前にいる化物らしいのです。犬、猿、雉の三匹は驚いていました。まさかこんなところに化物が居るとは思ってもいなかったのでしょう。やがて、話が終わり桃太郎は帰ろうとしていました。その時、突然現れた巨大な亀に捕まってしまいました。犬、猿、雉の三人は助けようとしますが、あまりにも巨体過ぎてとても近づけません。そのうちに桃太郎はそのままどこかへ連れ去られてしまいました。残された犬、猿、雉はこれからどうするか話し合う事にしました。

少しして、桃太郎が戻ってきました。亀に連れて行かれたのはこの世界を支配する神様でした。そして、桃太郎はお礼に力を授かる事になるのですが、その前に亀は桃太郎にお願いをしました。それは、この世界に住む生き物を仲良くさせる事でした。桃太郎は快く引き受け、まずは近くの村へ行くことになりました。

道中、犬、猿、雉が言い争いを始めました。内容は『誰が桃太郎様を守るか』についてです。「「「俺(私)だ」」」三人は睨み合います。そこに犬が止めに入りました。猿は不満げな表情を浮かべています。結局桃太郎の鶴の一声で決着がつきました。そして桃太郎達は目的の村に到着しました。村に入ると犬はすぐに桃太郎を背中に乗せ、猿と雉もそれに倣いました。

桃太郎達は村の人達を驚かせてしまいました。しかし、桃太郎が事情を説明するとすぐに歓迎されました。桃太郎は村長からおもてなしを受けました。そしてその晩、桃太郎は宴席に招かれることになりました。犬、猿、雉は宴席には参加しませんでした。なぜならこの村に犬と猿と雉は入れないからです。しかし、桃太郎は気にせず宴会場へ行きました。桃太郎は皆と楽しく食事をしました。そして楽しい時間を過ごした後、夜が明けると桃太郎は旅立ちました。犬、猿、雉は見送りに来てくれました。「またいつでも来て下さいね」「ありがとう。必ず戻ってくるよ。約束する。それまで待っていてくれるかい?」「はい! もちろんです!」こうして桃太郎は旅を続けました。

それからしばらく経ち、桃太郎は犬達が住む村の近くまで来ました。犬と桃太郎は再開を喜びました。犬は桃太郎の背に乗りながら色々と話しかけました。すると、犬の話を聞いていた桃太郎の様子がおかしくなりました。何やらブツブツと言い出したのです。どうやら何かを考え込んでいるようです。やがて、考え事がまとまったのか桃太郎は話を切り出しました。「俺は犬君達にお願いがあるんだ」桃太郎は言いました。その内容は、自分達と一緒に鬼ヶ島まで行って欲しいというものでした。犬は驚きました。桃太郎の頼み事を聞いた犬が最初に思った事は、とても無茶な願いであるということでした。鬼ヶ島は犬達の住む場所からは遠く、行くだけでも一苦労なのです。犬が困っているのを見て桃太郎は理由を話しました。実は鬼ヶ島に行く途中で道に迷ってしまった。そこで犬君の知っている知識で鬼ヶ島への近道を案内して欲しいというのです。犬はその説明を聞いて納得し、引き受ける事にしました。

その翌日、犬は桃太郎を連れて森の奥深くへ向かいました。森の中は薄暗く、昼間だというのに太陽の光が届いていません。木々が生茂り、風で葉が擦れる音が聞こえてきます。時折聞こえる動物の鳴き声が不気味さを醸し出しています。その中を桃太郎は進んで行きます。しばらくして、犬は足を止めて桃太郎に指示を仰ぎました。桃太郎は腰につけていた袋から小さな石を取り出し、それを犬に投げ渡しました。犬はそれを受け取るとまじまじと見つめます。「これを地面に置いて真っ直ぐに進むといい。きっと出口が見えるはずだ」桃太郎はそう言うと先に歩き始めました。犬も後に続きます。少し進むと大きな木が見えました。犬は桃太郎を見失わないように注意しながら先に進みます。その時、木の影から猿が現れました。「やあ、こんな所で会うなんて奇遇だね。お散歩かな? もしそうなら僕も一緒に付いて行っていいかい?」猿はとても上機嫌で話し掛けてきました。しかし、犬はその声を無視し、猿の横を通り過ぎようとします。「ちょっと待ってよ。つれないじゃないか。ねえ、お猿さん悲しいな。僕は仲間外れなのかい?」「黙れ! さっさと去れ!」猿は悲しげな態度を見せますが、それが演技だと見抜いている犬はすぐに追い払いました。猿は肩をすくめ、その場を去りました。その後、犬は何度も立ち止まり、桃太郎の位置を確認しました。しばらく歩いていると、桃太郎が立ち止まっていました。犬は疑問を抱きましたが、気にせず桃太郎の元に行きました。桃太郎は「そろそろ休憩しようか」と言って座り込みました。犬もその隣に座ると疲れた体を休ませました。すると桃太郎が犬の方を向いて言いました。「君は本当に賢いな。あの時俺を助けてくれた犬君だよね。ありがとう」犬はその言葉を聞くと、嬉しさで尻尾を振りました。そして、犬は自分について語り始めました。桃太郎と出会った頃の事、桃太郎を助けた時の事、今までの出来事などを順を追って丁寧に話しました。桃太郎は犬の話を聞き終えると満足げな表情を浮かべ、「お礼を言うのはまだ早い。鬼ヶ島に着くまでは気を抜かないでくれ」と言いました。犬は桃太郎の言葉の意味がわからず不思議そうな顔をします。「それはどういう意味ですか?」「実は鬼ヶ島には悪い鬼がいるんだ。そいつらは鬼ヶ島を牛耳っていて、この世界の全てを自分の物にしようとしている。その事を君に伝えようと思ってね。今、鬼ヶ島では鬼たちが世界征服を企んでいるんだよ。それを阻止する為に俺は鬼ヶ島へ向かっている。もちろん君にも協力してもらうよ」「そんな事を聞いてしまったら行かないわけにはいきません。わかりました。私も手伝いましょう」桃太郎は笑顔で答えました。桃太郎は再び立ち上がり、先へ進み始めます。犬もそれに続きました。

猿はとても上機嫌で話し掛けてきました。

その日は森の中で野宿することになりました。犬は火を起こし、肉を焼きます。その様子を桃太郎はじっと見つめています。しばらくして、桃太郎は犬に向かって質問を投げかけました。「なぁ、君はどうして鬼ヶ島へ行くことにしたんだい?」「お腹が減っているだろうと思いまして……。どうぞ、お食べください」犬は焼き上がった肉を差し出しながら答えました。「そういうことじゃないんだけどな。まあいいか。それよりも、君は鬼退治に協力すると言ったけど、鬼が怖いとは思わないのかい? もしも鬼に遭遇したら君は逃げられるのかい?」桃太郎は真剣な眼差しで犬を見据えて問い詰めます。犬は怯えることなく、桃太郎の目を見てしっかりとした口調で答えました。「鬼たちは人間を食べてしまいます。でも、私は桃太郎様のお供ですから。何があっても絶対に離れません」桃太郎は犬の返事を聞き、感心して微笑みました。「やっぱり君を選んで正解だったよ。頼りにしているよ」その後、二人は会話を交えながら食事を終えました。

翌朝、二人はすぐに出発の準備を始めました。桃太郎と犬は荷物を纏め終わりましたが、猿がまだ寝ていました。桃太郎が猿の元へ近づき、起こそうと手を伸ばしたその時でした。桃太郎の手を避けようと動いた猿の手が偶然にも桃太郎の顔に当たりました。猿はすぐに謝りましたが、桃太郎の怒りは頂点に達し、猿の頬を思い切り殴りつけました。猿は気絶してしまいました。

猿が起きない為、仕方なく三人で行くことにしました。

森を出てしばらく歩いていると猿が目を覚まし、桃太郎の姿を見ると慌てて逃げ出しました。桃太郎は追いかけて捕まえると頭を拳で殴って再び気絶させました。しかし、すぐにまた起き上がり逃げ出したので、結局猿を縄で縛りつけて連れて行くことになりました。

歩き続けて数時間後、桃太郎達は鬼ヶ島に到着しました。鬼ヶ島は島の中心にある山を囲むように町があり、周りは崖に囲まれていました。「さあ、行こうか」桃太郎が言うと犬は返事をして鬼ヶ島の町へ向かいました。鬼ヶ島に着いたばかりの桃太郎達に気付いた鬼達が襲い掛かってきました。犬は鬼に立ち向かって行きました。桃太郎も鬼達に戦いを仕掛けます。

しばらくして、犬が一匹の鬼を倒したところで他の鬼たちも諦めたのか何処かに去っていきました。「犬助、怪我はないかい?」桃太郎は犬の側に駆け寄りました。「大丈夫です。それよりも鬼ヶ島でこんなに暴れたら鬼たちが怒ってもっと強くなって帰ってくるんじゃ……」「それなら心配要らないよ。俺の祖父である世界最強の戦士の一人、鬼ヶ嶋の鬼神はもうこの世にはいないんだ」「そんなことがどうして分かるんですか?」「鬼ヶ島で暴れれば鬼が強くなるだろ? 鬼ヶ島で一番強い鬼を倒せばその鬼は死ぬんだよ」桃太郎は笑いながら言いました。「なるほど……鬼が強くなるには鬼ヶ島で誰かと戦う必要があるということですね」犬は納得して呟きました。「じゃあ早く鬼ヶ島の奥にいる一番強い鬼を倒しに行きましょう!」猿は二人の会話を聞いて興奮気味に提案します。「猿彦、君は何か勘違いしていないかい? 今、鬼ヶ島で暴れているのは悪しき鬼ではなく善良な鬼なんだ。鬼ヶ島を平和にする為に俺は鬼と戦っているんだよ」「そうですか……。それならば私も手伝わせてください」猿は少し残念そうな顔をした後、やる気に満ちた表情に変わりました。桃太郎はそんな猿を見て微笑みました。

桃太郎一行は鬼ヶ島の中央に位置する山に向かいました。道の途中にある茶屋では、女将が犬の姿を見て驚きました。「あらまぁ! 可愛いワンちゃんね。でもあなた人間よね? 何でワンちゃんと一緒なのかしら?」「実は私は犬の生まれ変わりなのです。なので犬の言葉が分かりますし、犬と同じ速度で走れるんですよ」桃太郎は嘘の説明をしました。女将はそれを真に受けて感心した様子で何度も首を縦に振りました。そして、お茶とお団子を無料で振る舞ってくれました。桃太郎一行が山の麓に着くとそこには多くの鬼が待ち構えていました。鬼達は桃太郎の姿を見ると武器を構えて一斉に襲い掛かりました。

犬は素早い動きで敵を翻弄すると、次々と敵を蹴散らしていきました。桃太郎と猿は鬼を殴りつけて気絶させていきました。雉は上空から奇襲を仕掛けて相手を混乱させました。しばらく経つと、鬼の姿が見えなくなり辺り一面血の海になりました。桃太郎達は鬼の群れを全て倒し終えたようです。桃太郎達が町に戻ると町の鬼たちは大喜びで桃太郎達を迎えました。鬼の中には泣いて感謝する者までいました。鬼ヶ島の住民全てが歓迎ムードの中、桃太郎だけは浮かない顔で黙っていました。その夜、桃太郎はこっそり町を出て行きました。お爺さんとのお別れが辛いのでしょう。翌朝になっても桃太郎は戻ってきませんでした。

それから数日後、桃から生まれた子供がお爺さんの家にやってきました。桃から生まれた子供は桃太と名付けられ、大事に育てられることになりました。しかし、桃太郎は桃太郎のまま何も変わることはありませんでした。ある日、桃太郎がお爺さんに相談しました。「僕は一体どうすればいいのでしょうか?」「お前の好きなように生きればいい」「僕の好きに生きる?」「ああ、そうだ。もしやりたい事があるならその通りにやればいい。ただし自分が何をすべきかしっかり考えてから実行しろよ」「わかりました。自分のやりたい事を考えます」「それが良いだろう」

桃太郎は毎日考え続けました。その間、桃から生まれた子供達が次々と家を訪れました。お婆さんが孫が増えたと言って喜んでいると、今度は犬、猿、雉がやってきたのです。犬と猿と雉が桃太郎のところに来て言いました「私たちも一緒に旅に連れて行ってください」「断る」「何故ですか?」「俺の旅は危険なんだ」「それでも構いません」「……」「お願いします!」

桃から生まれた子供達

桃太郎は根負けして三人を連れて行くことにしました。桃太郎は旅立ちの準備を整えて、お婆さんの所へ行きました。「お婆さん、今までありがとうございました。どうかお元気で」「こちらこそありがとう。あんたは良い子に育った。これを持っていきなさい」桃太郎は大きな袋を受け取りました。中には大量の食糧と金銀財宝が入っています。「こんなに沢山……貰えません。持って行けないです」「大丈夫。この国では金より価値がある物だから。それに食料は腐る前に食べなければいけないし、服も定期的に洗わないと臭くなる。だからこれは必要経費なんだ」桃太郎は納得して荷物を背負いました。そして家族に見送られながらお婆さんと別れました。

桃太郎達は船で川を下りました。途中、犬が言いました「この川って確か有名な殺人川じゃなかったかな?」「何だそれは?」「この川の両岸にはたくさんの首が落ちているのさ。しかもどの首にも見覚えがあるんだよなぁ」犬は不思議そうに首を傾げました。桃太郎達は順調に進んでいきました。

ところが、とある港に着くと、そこには大勢の鬼たちが待ち構えていました。鬼たちは武器を手にすると襲いかかってきました。桃太郎は鬼達に向かって走り出しました。猿は空から奇襲を仕掛けると、鬼を次々と気絶させていきます。桃太郎は刀を振り回し次々と鬼を倒していくと、あっという間に鬼は全員倒れてしまいました。桃太郎が刀を鞘に収めて歩き出すと、犬と猿は慌てて桃太郎の後を追いかけました。桃太郎達が町に戻る途中で、一人の男が現れました。男は桃太郎の姿を見ると、大声で叫びました。「貴様が桃太郎か! 悪いが死んでもらうぞ」桃太郎は男を無視して通り過ぎようとしました。男が剣で斬りかかると、桃太郎はそれをかわし逆に殴り飛ばしました。男は地面に転がった後すぐに立ち上がりました。「俺は赤鬼青鬼黄鬼緑鬼紫鬼橙鬼桃色鬼の大将、赤鬼だ。貴様に決闘を申し込む」「勝手に名乗られて困っているんだけど」「桃太郎さん、相手にしない方がいいですよ。こいつらは頭がおかしいんです。関わらない方が身のためです。あと、こいつは桃から生まれた桃太郎です」犬が桃太郎を説得するように言いました。「うるさい、黙れ犬め。俺は桃から生まれた桃太郎だ。さあ、勝負しろ桃太郎」「いや、お前は桃から生まれた桃太郎じゃない。桃から生まれた桃太郎は俺のことだ」「いいや、お前は桃から生まれた桃太郎じゃない。俺たちは桃から生まれた桃太郎だ。その証拠に桃から生まれた桃太郎と書いて桃太郎と読むんだろ? なら、桃から生まれた桃太郎はお前だけだ。俺のことは赤鬼と呼ぶんだ」「違う。俺は犬に助けてもらった桃から生まれた桃太郎だ」「嘘をつくな、猿に助けられた桃太郎のくせに」「桃太郎は一人で犬と猿を助けるんだ」「それだと話がややこしくなるだろうが」「桃太郎さん、落ち着いてください。喧嘩をしても意味ありませんよ」「犬助は黙っていろ」「猿彦も落ち着け。今は仲間割れをしている場合ではない」「雉男の言うとおりです。まずは落ち着きましょう」「そうだな。すまない。熱くなりすぎたようだ」「桃太郎さん、私も少し興奮しすぎました。申し訳ございません」「皆、落ち着いたようで良かった。さっさと終わらせよう」「ちょっと待て、どうしてそうなる?」「だって、お前弱いじゃん」「ふざけんな!」赤鬼は怒って桃太郎に飛びかかりました。しかし、あっさり避けられました。桃太郎は拳を振るいました。赤鬼の顔に当たり吹き飛びました。そのまま気絶してしまいました。桃太郎達は先に進むことにしました。

しばらく歩いていると、大きな屋敷を見つけました。猿が言いました「ここにいるのは強い奴ばっかりだな」犬が続けました「そうですね。ここは避けた方が良いかもしれませんね」「よし、この先は通さないぜ」桃太郎達の前に門番が立ち塞がりました。「ここを通りたいのか? だったら金を持ってこい」桃太郎達が金を渡すと、あっさり通してもらえました。「お兄ちゃん頑張ってね」小さな女の子が桃太郎に声をかけてきました。桃太郎は嬉しくなって「ありがとう」と答えました。すると、女の子は「えへへ、どういたしまして」と言いました。「ねえ、君の名前は何ていうの?」桃太郎が尋ねると、女の子は答えました。「私はお菊だよ。お爺さんとお婆さんと三人で暮らしているんだよ」

大きな屋敷

お菊と名乗る少女の言葉を聞いて、桃太郎の心が痛みました。そして、こう思いました。お爺さんとお婆さんに会いたいと。しかし、会えないのです。なぜなら、お爺さんとお婆さんはすでに亡くなっていますから。

(終)



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