【桃太郎14

昔々、ある所に、お爺さんとお婆さんがありました。毎日、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

ある日、お婆さんがいつものように川に洗濯をしに行くと、川上から大きな桃が流れてきました。お婆さんはその桃を家に持って帰り、お爺さんと一緒に割ってみたところ、中から元気な男の子が出てきました。二人はその男の子に桃太郎と名付け、大事に育てました。

桃太郎が大きくなった頃、ある国では飢饉が起こり、皆食べ物に困っていました。「うぅ……もう食べ物がないよ」「これじゃあ私達も飢え死にしてしまうわ……」「どうしよう……このままだと皆死んじゃうよぉ」皆、とても弱り果てていました。そこで桃太郎は鬼ヶ島へ行き鬼退治すれば皆喜ぶし、自分なら簡単に倒せるだろうと思い、一人で鬼ヶ島へ向かいました。途中、犬と出くわしました。「桃太郎様ぁ〜! 何処へ行くんですか?」「ちょっと鬼退治に行ってくる」すると、犬は言いました。「あっ! 俺も行きます!」そうして桃太郎と犬は鬼ヶ島に向かいました。

桃太郎と犬が鬼ヶ島に到着すると、鬼達が沢山集まっていました。「何だ? あいつら」「あれは……確か犬と猿じゃないか? あの馬鹿共め……」「鬼ヶ島に乗り込んで来るとはいい度胸をしているぜ」犬と猿の姿を見た鬼達は口々に言いました。「桃太郎様ー‼ さぁ、戦いましょう‼」「うるさい。お前は何もしないで黙ってろ」桃太郎と犬が鬼に向かって行こうとすると、一匹の鬼が立ち塞がりました。「待てぃ!!!

そこには角の生えた大男が立っていました。「この鬼ヶ島の頭領、鬼大将だ!」「鬼大将⁉ そんな奴、ぶっ飛ばしちゃいましょうよ!」犬はやる気満々です。しかし桃太郎は冷静でした。「よし、犬。お前は帰れ。俺はこいつを倒す。」すると、鬼大将は笑いながら言いました。「ハッハァッ‼ おい犬。貴様は何か勘違いしていないか? これは俺達の宴なんだぞ。何故部外者のお前が入って来たんだ。悪いけど帰ってくれないかな。今すぐ出て行かないのならば痛い目にあってもらうことになる。」桃太郎は落ち着き払った様子で言いました。「ああ、別に良いぞ。やれよ。ただの人間相手に怖じ気ついたのか?」鬼大将は怒り狂いました。「糞ガキが……調子に乗るなよ‼ 皆の者、かかれぇええ!!!」鬼大将の合図で鬼達が次々と襲ってきました。しかし桃太郎は鬼大将と戦い始めました。鬼大将は強い力で桃太郎を押し潰そうとします。一方、桃太郎は鬼大将の攻撃を全て見切り避けています。やがて桃太郎の鋭い一撃が鬼大将の首を捉えました。鬼大将は首を押さえ苦しんでいます。「くそっ……だが、まだ終わっていないぞ……。」鬼大将は桃太郎の隙を突いて殴りかかってきました。桃太郎は何とか攻撃を避けましたが、衝撃により地面に倒れてしまいました。「フハハ……残念だったな。これで終わりだ‼」

倒れた桃太郎に、とどめを刺そうとする鬼大将。

その時でした。突如として空から現れた巨大な桃が、鬼大将を弾き飛ばしたのです。桃太郎が後ろを振り向くと、そこにはお婆さんがいました。お婆さんは叫びました。「もう大丈夫よ! 私が助けに来たわ‼」「ば、馬鹿な……どうしてここに……」驚く鬼大将に構わず、お婆さんは桃太郎を助け起こしました。「桃太郎、よく頑張ったわね。後は私に任せなさい。」お婆さんは桃太郎を守るように前に立ち、鬼達を睨み付けました。

そして次の瞬間、お婆さんの体から衝撃波のようなものが発生し、周りにいた鬼達は吹き飛ばされました。お婆さんはゆっくりと歩き出し、そのまま鬼大将の元へと近付いていきました。鬼大将は立ち上がり、必死に抵抗しようとしました。「クッ……糞ババアがぁ‼ 俺はまだ負けていないぞぉおおおお!!!

鬼大将は勢い良く飛びかかりましたが、軽くかわされ、カウンターを食らいました。鬼大将の顔が変形し、血飛沫が舞います。その後も鬼大将は反撃を試みますが、全く敵いません。ついに鬼大将は、息も絶え絶えになってきました。「こ、これが老いというものなのか……? 何故だ……何故こんなにも差が出てしまうのだ……? 一体何が違うというんだ……」それを聞いたお婆さんは答えました。「若さと美しさの違いだよ」鬼大将は、絶望の表情を浮かべました。「もうやめてくれ……もう許してくれ……」「そうかい。じゃあ、とどめといこうかね」

鬼大将の体はボロ雑巾のように引き裂かれ、辺り一面が真っ赤に染まりました。こうして桃太郎達は無事に鬼ヶ島を攻略し、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。



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