【桃太郎15

昔々、ある所に、お爺さんとお婆さんがありました。毎日、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

ある日、お婆さんがいつものように川にやって来て洗濯をしていると、川上からどんぶらこっこ〜♪ どんぶらこっこ〜♪ と大きな桃が流れてきました。「あらまあ大きいこと」そう言いながらお婆さんは大きな桃を持ち上げて、家まで持って帰りました。さっそく割ってみると中から可愛い男の子が生まれました。

二人はその子供を桃太郎と名付けて大切に育てました。そして、桃太郎はすくすくと成長し立派な青年になりました。

そんな時、村人たちが集まってきました。どうやら近くの山に鬼が住み着いたらしく困っているらしいのです。そこで村人たちが相談した結果、桃太郎に相談することになりました。すると桃太郎は立ち上がりこう答えました。「よし! 鬼どもを打ち倒し、俺様がこの村を救おう!」

こうして桃太郎たちは鬼が住むとされる場所へ向かいました。途中、犬、猿、雉と出会い仲間に加え、さらに山の中に入って行きました。

犬、猿、雉

しばらく進むと洞窟が見えてきたので桃太郎一行はそこに入りました。するとそこには角の生えた恐ろしい顔をした男たちがおりました。彼らが鬼たちなのでしょう。鬼たちは突然の侵入者に驚きましたがすぐに怒り始め、桃太郎一行に襲いかかります。しかし彼らは桃太郎たちに倒されてしまいました。

その後、桃太郎たちは洞窟の奥へ進みました。するとそこには金銀財宝や綺麗な織物、そして宝箱が置かれていました。鬼たちはこれらを奪って逃げようとしたのでしょう。しかし運悪く桃太郎一行に見つかっちゃいました。宝を持って帰ろうとしたその時、鬼が持っていた剣が桃太郎に向かって飛んできました。

ザクッ‼ なんということでしょう! 桃太郎の胸に剣が突き刺さってしまいました。「うわぁー‼」驚いた桃太郎は叫び声を上げ倒れ込みました。「だ、大丈夫か⁉」「桃太郎殿!」犬と猿と雉が駆け寄りました。鬼たちも心配して近寄ろうとしましたが、桃太郎によって止められました。

「来るんじゃねぇ!!!」桃太郎が怒鳴ると鬼たちはビクッとして立ち止まりました。それを見た桃太郎は、胸から剣を抜き取り血まみれのまま鬼たちを睨みつけました。「俺は死なないっ! こんなものじゃあ俺は死なないんだよっ! まだ戦えるんだぜぇ……!」桃太郎はそう言うとゆっくりと立ち上がり、鬼たちの方を向きました。「かかってこいよ! 雑魚どもがぁ!」鬼たちは桃太郎の言葉を聞いて震え上がりました。それは桃太郎があまりにも恐ろしかったからです。「ひぃいいい‼」「バケモノぉおお!」鬼たちは恐怖のあまり逃げようとしますが足が動きません。「くそっ! 動け! 動くんだ! ちくしょおおお!」「いやだいやだ死にたくない!」鬼たちは涙を流しながら必死で足を引っ張り合いました。やがて諦めたのか、一人、また一人と力尽きていきました。その様子を見た桃太郎はニタリと笑いました。「馬鹿め……。鬼どもは死んだぞ……」桃太郎はそう呟いて倒れこみました。その顔はとても幸せそうな表情を浮かべていました。

こうして桃太郎は死んでしまいました。

それから何年経ったでしょうか。ある日、一人の若者が川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこっこ〜♪ どんぶらこっこ〜♪ と大きな桃が流れてきました。「あっ、これ、桃太郎さんじゃないですか?」若者がそう言って桃を拾い上げると、桃から可愛らしい男の子が生まれました。「桃太郎さん、こんにちは」「誰だお前は? どこかであったことあるか?」「あ、覚えてないんですね。僕ですよ、犬です」犬はそう答えると桃太郎は思い出したようです。「あぁ、あの時の犬だったのか。それで今度は犬が俺を助けてくれたわけか」桃太郎は嬉しそうに言いました。「そういうことです。さっそく鬼ヶ島へ行きましょう」犬は桃太郎と一緒に鬼ヶ島へ向かいました。途中で猿、雉と合流し、鬼ヶ島に着きました。桃太郎一行は鬼たちと戦い、なんとか勝利することができました。そして、鬼たちから奪った財宝を村人たちに分け与えると、桃太郎たちは村を後にしました。

桃太郎たちが去った後、村人たちは桃太郎に感謝すると共に、鬼たちを弔いました。

その晩、村人たちが寝静まった頃、鬼たちが再び村を襲いました。村人たちは何も知らずにぐっすりと眠っています。「みんな、起きてくれ!」村の見張りをしていた若い男が叫びました。しかし、誰も目を覚ましません。他の男達も起こそうとしますが無駄でした。鬼たちは村人たちを次々と殺し始めます。「やめて下さい!」そこへ桃太郎一行が現れました。「なんだテメェらは⁉」「俺は桃太郎だ! 貴様らを殺しに来た」「ふざけるな! 誰がお前なんかの言うことを聞くもんか!」鬼たちは怒り狂いました。「じゃあ殺せ! 殺してみろよ!」桃太郎はそう叫ぶと鬼たちに向かっていきました。鬼たちも応戦しようと武器を取りましたが、桃太郎の強さには敵いませんでした。「この程度か⁉ 弱い! 弱すぎる!」桃太郎は鬼たちにトドメを刺そうとすると、鬼たちは泣きながら命乞いを始めました。「助けてください!」「お願いします!」「何でもしますから!」桃太郎はニヤリと笑いました。「いいだろう。ただし条件がある。二度と人を襲うんじゃねぇぞ!」鬼たちは必死でうなずきました。桃太郎は鬼たちの心臓を取り出し、鬼たちは苦しみながらも桃太郎の仲間になりました。こうして桃太郎は鬼を従えたのです。

一方その頃、桃の女神は人間に変身して町を歩いていました。すると突然、背後から声をかけられました。「おい! そこの女!」「はい?」振り向くとそこには大柄の醜悪な男と屈強そうな男たちが立っていました。「なんだ? 私の事を呼んでいるのか?」「ああそうだ! お前だ! 女! お前は何者だ!」「私は桃の精だ」「ほう。お前が噂の……。ちょうどいい。お前を人質にすれば、あの忌々しい桃太郎は手出しができまい!」「え? どういう事ですか? 何をするつもりなんですか?」「黙れ! 動くな! 喋るな! いいか、動くなよ!」男はそう言うと女神の口に布を押し込みました。「んー! んんー‼」「よし! お前たち! こいつを縛り上げろ!」「へい!」「早くしろ!」屈強な男たちは女神の腕を掴みました。「ふん……! こんな縄……! な、何だコレは⁉ 解けないぞ!」「ははは! その縄はどんなに力を入れても切れることはないぞ! 諦めろ! さぁ、来い!」男と部下達は女神を無理やり連れ去りました。

「くそっ! 離せっ! この下衆どもめ!」「うるさいぞ! 大人しくしろ!」「嫌だっ! 誰か! 助けてぇっ‼」「諦めろっ! ここには俺たちしかいないんだよぉ!」「くそぅ! くそぅ……!」「もう諦めたのか? つまらん奴だ……

それからしばらく経ち、桃太郎はようやく村に帰ってきました。桃太郎はお婆さんに事情を話しました。「そうですか。あの人はそんな事に……」お婆さんは悲しそうに言いました。「それで、お婆さん。あいつはどこにいるんだ? 俺は今すぐにでも殺したいんだが」「あの人の所へ案内しましょう」お婆さんは桃太郎を連れて、男の元へ向かいました。

男は牢屋に入れられていました。そして、その前には桃太郎が立っています。「どうしたんだ桃太郎? 随分と怖い顔をしているが」「あぁ、これは失礼しました。つい殺気が出てしまいまして」「殺気だと⁉ 俺を誰だと思っている⁉ 俺の名は魔王ルキフグス様だぞ!」「ふむ。確かに名乗られてみれば、聞いたことがあるような気がしますね」桃太郎はそう言うと、剣を抜いて構えました。「では死んでいただけますか?」「ふざけるなっ‼ 俺を殺したら大変なことになるぞ!」「いえ、特に何もなりませんよ」桃太郎は冷たく言い放ちました。「何を言っているんだ⁉ 俺は魔王だぞ⁉ お前のご主人様なんだぞ⁉ それをよくも……!」

魔王ルキフグス

桃太郎は一瞬で間合いを詰めると、魔王の首を斬り落としました。「ぐわああああっ! 首があああああ!」「終わりました。帰りましょう、お婆さん。今日は宴会です」「ええ、そうですね」こうして世界は平和になりました。めでたしめでたし。



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