【桃太郎24

昔々、ある所に、お爺さんとお婆さんがありました。毎日、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると川上から大きな桃が流れてきました。お婆さんは大きな桃を持って帰り、早速その桃を割りました。すると中からは元気な男の子が生まれました。名前は桃太郎と言いました。お婆さんは桃太郎に着るものを与え、食べ物を食べさせました。成長すると桃太郎は立派な若者になりました。

ある日のこと、お婆さんはいつものように川に洗濯しに行きました。その時、川上から大きな桃が流れてきました。お婆さんが大きな桃を持ち帰ろうとすると桃の中から元気な女の子が飛び出しました。名前は桃子といいました。二人は結婚し夫婦になりました。二人の間には子供が出来ました。その子の名前はみかちゃんです。三人はとても幸せに暮らしていました。

そんなある日、お爺さんは山に柴刈りに行っていました。そこで、お爺さんは小さな洞窟を見つけました。お爺さんがその中に入ると金銀財宝がありました。それを持ち帰ったお爺さんはそれを村中の人に教えました。みんな大喜びしました。しかし、それを良く思わない者がいました。それは村長でした。村長は自分の取り分が減ると思ったのです。そこで、村長はお爺さんとお婆さんを殺すことに決めました。

お爺さんが家に帰るとそこには刀を持った鬼たちが待っていました。お爺さん達は必死に逃げました。逃げて逃げた先に崖がありました。追い詰められたお爺さん達。その時、桃太郎がお爺さん達の前に立ちふさがりました。「私が食い止めている間に早く逃げるんだ!」そう言うと桃太郎は鬼たちと戦闘を始めました。桃太郎は勇敢に立ち向かっていきました。鬼たちは強かったのですが、桃太郎もまた強い戦士でした。

一方その頃、お婆さんも大変な目にあっていました。お婆さんの目の前には血まみれの鬼が倒れています。その鬼の後ろには刀をもった村長の姿がありました。「この婆ぁ! 俺様から財産を奪うとは許せねぇ‼」お婆さんは急いで桃太郎を追いかけようとしますが村長に阻まれてしまいました。そして、お婆さんも鬼と同じように斬られてしまったのです。

桃太郎とお爺さんは何とかして森の中までやってきました。桃太郎はお爺さんに言いました。「ここは僕に任せて下さい」そういうと桃太郎はまた、鬼たちに向かって行きました。しばらくすると、遠くの方から悲鳴が聞こえてきました。「あああ!!! やめてくれぇ‼ 殺さないでくれぇ‼」桃太郎の声です。桃太郎が戦っているようです。すると、桃太郎の声がだんだん小さくなっていきました。もう駄目だと思った時、桃太郎が帰ってきました。手にはボロボロになった刀を持っています。どうやらこれで鬼を倒したようでした。お爺さん、桃太郎が戻ってきたことを心の底から喜びました。そして、桃太郎は鬼ヶ島の宝をすべて持って帰ってきたのでした。

桃太郎達が帰ってきてから数日たったある日、お爺さんとお婆さんはあることに気づきました。みかちゃんがいないのです。

二人は村中を探し回りました。けれど、みかちゃんは見つかりません。心配で心配で夜も眠れないお爺さんとお婆さん。しかし、みかちゃんは突然戻ってきました。なんと、みかちゃんは山賊に攫われていたのです。みかちゃんの親は泣きながら山賊に娘を返してくれと頼み込みました。山賊は笑いながら、こんな要求をしました。「それじゃあ、身代金を払って貰おうか。いくらでも構わないぜ? ただ、金のある所なんて知ってるわけがないだろうな。だから、ここにある金銀財宝全部を貰うってことにしよう!」お爺さん、お婆さん、とても悩みました。悩んだ結果、お爺さん達はその条件を飲むことにしました。

桃太郎達は旅を続けていました。目的地は桃源郷です。お爺さんはお婆さんと桃太郎のために元気が出るようにと一生懸命作ったお弁当を渡しました。桃太郎達は美味しそうにそれを頬張りました。お腹いっぱいになって、桃太郎達は出発の準備を整えました。その時、桃太郎はお婆さんが作ったお弁当がないことに気付きました。「お婆さんのお弁当がないじゃないか! お婆さんが困ってしまうよ! すぐに探そう‼」

桃太郎は急いで探し始めました。桃太郎は必死にお婆さんを探しました。しかし、お婆さんはどこにもいませんでした。桃太郎は涙を浮かべました。その時、お婆さんの持っていた荷物の中に一通の手紙が入っていることに気付きました。そこにはこう書かれてありました。「桃太郎さん、私はあなた達と一緒にいることができません。私も桃太郎さんとずっと一緒にいたかったです。本当にごめんなさい。私のことは忘れて下さい。今までありがとう。お婆より」桃太郎は手紙を読み終えると涙を流しました。桃太郎は決心しました。お婆さんがいなくなった今、お爺さんと二人っきりで生きていくしかないと。桃太郎は泣いていましたが、やがて立ち上がりました。「さようなら、お爺さん。僕はこれから一人で生きていきます」桃太郎は歩き出しました。

その頃、お婆さんは山賊達のアジトに到着していました。お婆さんは震える足でなんとかここまでたどり着いたのです。「さぁ、早く金目の物を出せ!」お婆さんは恐ろしくなって、その場に座り込んでしまいました。お婆さんの頭の中には桃太郎の顔が浮かんできました。すると、お婆さんは覚悟を決めました。「お金ならあります! どうか、みかだけは助けて下さい! お願いします‼」お婆さんは山賊達に頭を下げました。すると、山賊の一人が言いました。「そんなんじゃ足りないな! 俺らは優しいから、あんたも一緒に連れて行ってやるよ! まぁ、その女の代わりにお前が俺たちの相手をするんだけどな! ギャハハッ‼」お婆さんは絶望してしまいました。「嫌です‼ それだけは勘弁して下さい‼ なんでも言うことをききますから‼」お婆さんは泣き叫んでいます。すると、一人の男が口を開きました。「何でもいうことをきくだと? それは本当だな?」お婆さんは何度も首を縦に振りました。男はニヤリと笑うと、山賊たちに命令をしました。「おい、こいつを連れて行け。そしたら、あのガキには手を出さないでおいてやろう」お婆さんは抵抗できずに連れて行かれてしまいました。

お婆さんが連れて行かれてからしばらく経った頃、桃太郎はようやく鬼ヶ島に辿り着きました。そして、桃太郎は鬼ヶ島に火を放ちました。鬼ヶ島は炎に包まれています。鬼達は慌てて逃げ出しました。桃太郎は鬼達を追いかけました。鬼達は逃げ惑っています。桃太郎は一匹の鬼を見つけました。「待てぇええい‼」桃太郎は叫びながら、刀を抜きました。「貴様、何者だ⁉」「我が名は桃太郎! この世の悪を滅ぼすものだ‼」こうして、桃太郎と鬼との戦いが始まりました。桃太郎の剣が鬼の首を捉えました。「ぐわああああああ‼」鬼は断末魔を上げながら倒れました。桃太郎の勝利です。桃太郎はまた鬼を探し始めました。しかし、その時、突如として現れた津波によって、桃太郎は飲み込まれてしまったのです。桃太郎は波に流されながら、お婆さんのことを思い出しました。

一方、お婆さんは海の底に沈んでいました。もう息ができない状態です。その時、お婆さんは不思議な光景を見ました。「お母さん、お父さん、僕ね、今日鬼退治をしたんだよ」お婆さんは桃太郎が自分の子供であったことに気付きました。その時、一筋の光がお婆さんに差し込みました。気が付くと、お婆さんは浜辺に流れ着いていました。隣では桃太郎が眠っていました。「桃太郎! 起きなさい! 桃太郎‼」お婆さんが必死に呼びかけると、桃太郎は目を覚まし、ゆっくりと立ち上がりました。お婆さんは桃太郎の手を取り、「行こう、桃太郎。二人で生きていくんだ」と言いました。桃太郎は何も言わずにただ涙を流していました。「……はい」桃太郎は小さな声で返事をしました。二人は手を繋いで歩き出しました。これからどんな辛いことがあっても一緒に乗り越えていこうと心に誓いました。「そうだ、お婆さん。実は僕……」桃太郎は少し恥ずかしそうにして言いました。「私もだよ、桃太郎。でもまずは家に帰って、お爺さんと一緒に桃を食べよう」桃太郎と婆さんは笑い合いました。これから先もきっと楽しいことが待っているだろう、と桃太郎は思いました。

(了)

お婆さんは海の底に沈んでいました。


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