【桃太郎25

昔々、ある所に、お爺さんとお婆さんがありました。毎日、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると、川上の方から大きな桃が流れてくるではありませんか。これはきっと神様からの贈り物に違いないと考えたお婆さんは急いで家に戻りました。すると、ちょうどその時、お爺さんが大きな桃を持って帰ってきました。二人はその桃を切り分けることにしました。桃を切るとお爺さんはなんと若者の姿に変わり、お婆さんもとても美しい娘になりました。夫婦になった二人は子供が欲しいと考えていました。そんな二人の元に幸運なことに大きな桃が落ちてきたのです。そこでお爺さんとお婆さんは大きな桃を二人で切り分けようと提案します。しかし、その大きさはとても二人が持てるものではなく、やむなく二人で半分にして食べることにしました。そして食べてみると中からは元気な男の子が生まれました。こうして桃太郎と名付けられた男の子が生まれたのです。

桃太郎の誕生を祝うため宴が開かれました。お爺さんとお婆さんは「この子が大人になるまで育てたい」と言い出しました。しかし、「それでは鬼ヶ島にいる悪い鬼たちを退治してもらえないではないか!」と言って怒った村人たちが家から斧や刀を持ち出して襲ってきました。それでもまだ怒りの収まらない村人たちは鬼たちを倒すまで戻ってくるなと桃太郎をお爺さんとお婆さんの家から追い出してしまいました。

桃太郎は仕方なく旅に出かける準備を始めます。その様子を見たお爺さんとお婆さんは桃太郎が心配で仕方ありません。そこでまずお婆さんは黍団子を、次にお爺さんは刀を持たせてあげました。そうして準備を整えた桃太郎は旅立ちました。道中、犬が襲いかかりますが、桃太郎の持つ不思議な力で追い払いました。また猿が現れましたが、こちらも同じ方法でやり過ごしました。そしてとうとう桃太郎は鬼ヶ島に到着いたしました。

鬼たちは大喜びです。自分たちが世界で一番強いと信じていた彼らは自分たちの力を見せびらかすために宴会を開きました。そこには美味しい食べ物がたくさん並んでいました。それを食べた桃太郎のお腹ははち切れんばかりに大きく膨らんでしまいました。これを見た鬼達は調子に乗って桃太郎を殺そうと一斉に襲い掛かりました。桃太郎は持っていた刀を振り回し鬼達を次々と斬り捨てていきます。桃太郎の強さに驚いた鬼たちは一目散に逃げ出そうとしますが、鬼たちの大将が「逃げるんじゃねぇ! 戦え!」と怒鳴ると、鬼たちは立ち止まり、再び向かっていきました。

その後、桃太郎と鬼との死闘が始まりました。やがて戦いも佳境に入り、鬼が残り一匹となった時、鬼が最後の悪あがきとして懐から黄金でできた大きな金棒を取り出しました。ところが、あまりの大きさのため、振り回すどころか持ち運ぶこともできないほどです。これを見て桃太郎は勝利を確信しました。桃太郎が止めを刺そうと金棒に向かって歩いていくと、突然空が暗くなったではありませんか。慌てて上を見上げると巨大な黄金の物体が落下してくるところです。桃太郎はこの攻撃を避けようと横に跳びました。しかし、その動きが少し遅かったようです。運悪く桃太郎は地面にあった大きな石につまずいて転んでしまいました。そのため、桃太郎は避けることができず、黄金の金棒の下敷きになってしまいました。

こうして桃太郎は死んでしまったのです。(了)

(終)



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