【桃太郎29

昔々、ある所に、お爺さんとお婆さんがありました。毎日、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に行きました。

ある日、いつものようにお婆さんが川で洗濯をしていると、川上の方からドンブラコッコと大きな桃が流れてくるではありませんか。それをお婆さんが拾って家に持ち帰ってみると、なんとその桃から可愛い男の赤ん坊が生まれてきたのです。その赤ん坊は桃から生まれたから桃太郎と名付けられました。

桃太郎が成長して、十五歳になった時のことです。ある日、桃太郎が村で暴れている熊を倒したという噂を聞き、村の人が訪ねてきました。そして、村の人は言いました。「この辺り一帯には熊がたくさんいるから気をつけろ」と。それを聞いたお爺さんとお婆さんはとても驚きました。なぜなら二人は山の熊とは友達だったからです。しかし、その事を誰にも言わないように口止めされていたので、黙っていました。その後、村にたくさんの熊が現れました。村人たちが困っていると、桃太郎が颯爽と駆けつけ、あっという間に全ての熊を倒してしまいました。それからというものの、お爺さんとお婆さんの家は、他の人よりも沢山のお礼を持ってくるようになりました。そして、お爺さんとお婆さんはとても喜びました。さらに、それから数年経つと、お爺さんとお婆さんの家に桃が流れてくる事が多くなりました。それはどれもとても美味しそうなものでした。

さて、桃太郎が十八歳になってすぐの頃です。お爺さんとお婆さんはとても悩みました。というのも、桃太郎があまりにも強すぎるのです。そこで、お爺さんたちは桃太郎を山奥に連れて行きました。すると、そこには見たこともないほど大きくて綺麗な桃の木があったのです。お爺さんとお婆さんはその桃を切るように頼みました。ところが、桃太郎はそれを断りました。なぜなら、桃太郎が木を切るためには、何かを代償として差し出さなければならないと言ったからです。お爺さんもお婆さんも必死に説得しましたが、桃太郎の意志は固く折れません。とうとう諦めたお爺さんたちは、「ならば、その力で私達を守ってくれれば良い」と言いました。桃太郎はその提案を受け入れ、それ以降、自分の身も心もお爺さんとお婆さんに捧げることに決めました。こうして、桃太郎は二人の家に住み、鬼を退治しながら暮らすようになりました。

(終)



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