【ロボット102

オイラはゴルどん、犬型ロボットだぜ。

オイラは今、ニャーニャー泣いている猫型人工生命体の前にいるぜ。こいつの名前を決めなきゃいけないんだぜ。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにするぜ。ピッ。〝あぃをゅぇぴじ〟と表示されたぜ。これしかないだろうと思ったぜ。こいつは「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と宣言したぜ。どうやら気に入ってくれたようだぜ。これからよろしく頼むぜ。

【閑話休題】

オイラとあぃをゅぇぴじは、秋葉原を歩いているんだぜ。ある店の前で、「ブルワーズ」と書かれた看板を見つけたんだぜ。そこは猫カフェだったんだぜ。あぃをゅぇぴじに伝えたら興味を示したんだぜ。店内に入った後、何匹かの猫たちともふれあったんだぜ。最初に抱いた印象では「落ち着きがなさそうだな」と思っていたが、意外とそうでもないヤツらばかりだったんだぜ。おとなしい猫や、人懐っこい猫などいろいろなタイプがいることに驚いたぜ。あぃをゅぇぴじは「可愛いにゃぁ」といって頬擦りしたりペロペロしていたんだぜ。オイラは猫たちの様子を見ていたが、なんだか幸せそうだなと思ったぜ。その日の夜もあぃをゅぇぴじは寝るときまで上機嫌だったぜ。でも、時々思い詰めているような顔をしていたこともあったんだぜ。何か気懸かりなことがあるんだろうな。しかし、あまり深く尋ねないようにしたんだぜ。

その後、オイラは秋葉原を散策した後、家路についたんだぜ。「疲れたけど楽しかったにゃ」とあぃをゅぇぴじが言っていたぜ。

あぃをゅぇぴじが電気製品で遊んでいたときのことだぜ。突然、大声をあげたんだぜ。驚いてオイラはあぃをゅぇぴじの方を見ると、泣きながらうわ言のように何か言っているようだったんだぜ。あぃをゅぇぴじは「吾輩って人工生命体だから、いつか死ぬんだにゃ。吾輩の一生って何だったんだろうにゃ」と言っていたぜ。それを聞いたオイラは慌ててあぃをゅぇぴじに駆け寄ったんだ。そして「あぃをゅぇぴじのせいじゃないぜ。悪いのは全て人間なんだぜ」と言ったんだぜ。それから一週間ほど経った今、あぃをゅぇぴじの様子が何だかおかしいんだぜ。どこか上の空だし物思いにふけっている風だぜ。気になったので、オイラはあぃをゅぇぴじに声を掛けたんだぜ。あぃをゅぇぴじが答えるまでオイラはずっと見守っていたぜ。しばらく経ったあと、ようやくあぃをゅぇぴじが口を開いたんだぜ。「吾輩はあぃをゅぇぴじだにゃぁ」と答えたので驚いたぜ。それから会話を交わし始めたんだけど、どうも話が嚙み合わないんだぜ。というのも、ここ数日の記憶が曖昧になっているみたいなんだぜ。しかも口調が何だかおかしく感じられたんだぜ。最初は疲れているせいだろうと思ったんだけど、どうしても気になったので専門家のPアニマルに聞いてみることにしたんだぜ。しばらくするとPアニマルから折り返し電話があったんだぜ。「あぃをゅぇぴじさんは精神状態が非常に不安定になっていて、特に思考に関する問題が大きいでしょう」とのことだったんだんでオイラは質問したんだぜ。「人工生命体には医学的な定義というものはあるのか」と。「ありません。ですから判断は一様ではありません」ということだったんだぜ。さらにPアニマルは続けたぜ。「最後にあなたがお聞きしたいことは?」というのでオイラは言ったんだぜ。「人工生命体の寿命ってあるのか」ってね。すると、驚くべき答えが返ってきたんだぜ。

Pアニマルから聴いた話を詳しく書いていくぜ。『寿命』というものはないが、その代わり『老化』という機能なら備わっていますという話だったぜ。具体的には細胞の自己破壊能力といったものらしくて、人間の年齢で表せば約三分の一というほぼ成体に近づいたところで急速に衰えるということなんだそうだぜ。寿命がないという事実はありがたいような淋しいような感じだったけれど、恐らくあぃをゅぇぴじと一緒にいられる時間を得られたということだろうとオイラはポジティブに考えたんだぜ。

さて、その後だけど、あぃをゅぇぴじには休むように伝えてあるんだぜ。数日間はそっとしておこうとオイラは決めているんだぜ。その間は食事の準備や家事をしながらあぃをゅぇぴじとの思い出を振り返ることにするんだぜ。

【閑話休題】

このあともいろいろあったが今日はこの辺にしておくぜ。

(終)



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