【ロボット105

オイラはゴルどん、犬型ロボットだぜ。

オイラは今、ニャーニャー泣いている猫型人工生命体の前にいるぜ。こいつの名前を決めなきゃいけないんだぜ。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにするぜ。ピッ。〝あぃをゅぇぴじ〟と表示されたぜ。これしかないだろうと思ったぜ。こいつは「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と宣言したぜ。どうやら気に入ってくれたようだぜ。よかったぜ。

次にオイラは〝あぃをゅぇぴじは飼われている猫である〟と表示された機械の画面に「んなわけが!」と叫びながら飛び蹴りを決めたんだぜ。なんてこといいやがるんだぜ。怒るに決まっているぜ。だが、すぐに冷静になり、これは作り話だと自分に言い聞かせたんだぜ。しかし、オイラの気持ちを無視して、こんどは〝あぃをゅぇぴじはハワイに行くとカエルになりすます。ニャア〟という機械の画面に「んなわけが!」と叫びながら拳で何度も殴りつけたぜ。それでも気分は収まらないぜ。ニャーニャーなくあぃをゅぇぴじを横目に、またある時は〝吾輩はゴルどん、犬型ロボットだぜ〟と自己紹介の文章を表示している機械に向かって「んなわけが!」と叫んでいる自分がいたんだぜ。それでも怒りがおさまらないので、パンチを受けつけるおもちゃのサンドバッグ人形に八つ当たりしにいったんだぜ。殴って殴って殴ったせいで、人形はすっかりボロボロになっちゃったんだぜ。そこであぃをゅぇぴじはオイラを諌めるようなことを述べたぜ。「ゴルどん、暴力では何も生み出さないであるよ。吾輩のように頭脳明晰にならないかぎり。もっと精神的に成長してから吾輩にアドバイスすべきであるな」というような内容だった気がするんだぜ。それを聞いたオイラは「んなわけが!」と憤慨したぜ。〝犬的な部分なら充分にあるのである〟と表示された機械に向かって、「んなわけが!」と叫びながらかかと落としを決めたんだぜ。機械は床ごと潰されてしまったぜ。かわいそうなことにだぜ。オイラはさらにストレスを感じたぜ。ドスンドスン地響きを鳴らしながら怒りまくるオイラにあぃをゅぇぴじは言ったんだぜ。「ゴルどん、所詮吾輩たちの知能指数など本やコンピューターの演算によってでっち上げられた単なる数値にすぎないのである。頭脳が大切だなどと嘯く輩も結局はくだらない機械の数字に踊らされて満足しているだけのことなのである。吾輩たちの知能を真に評価するためには実際に試さねばならないのである」とあぃをゅぇぴじが言ったのにはびっくりしたぜ。

それでも怒りがおさまらないオイラは近くの森までやってきたぜ。ここならたくさんの動物がいるからきっとストレスを解消することができるに違いないと思ったからなんだぜ。ところが、そこで見つけたのは動物たちが乗った車だぜ。オイラはあぃをゅぇぴじと一緒に乗ってみたぜ。乗り心地がいいぜ。気分もリラックスしてきたぜ。この出来事を通じてオイラは機械よりも生き物を愛することや学習することの大切さを学んだ気がしたんだぜ。

それにしてもあぃをゅぇぴじのくせに生意気なことを言うんだぜ。よし決めたぜ! あぃをゅぇぴじの家に侵入してやろう。

そうしたらあぃをゅぇぴじが怖がって驚く顔が見れるかもしれないんだぜ。オイラはこっそりとあぃをゅぇぴじの家まで来たぜ。部屋に忍び込んでベッドの上に飛び乗ったら、すごい叫び声とともにあぃをゅぇぴじが驚いて飛び出したので、オイラは満足したんだぜ。しかも、そのまま走って逃げ出しちゃったぜ。意外と臆病者なんだなと思ったのと同時にもっと遊んでやろうかなとも思ったんだぜ。それからオイラはさまざまないたずらを仕掛けていったぜ。あぃをゅぇぴじもそれに引っかかることが何度もあって楽しい時間を過ごせたのさ。こうやっていたずらをしていくうちに、次第にあぃをゅぇぴじと仲良くなっていったぜ。だが、ある日のこと、突然、あぃをゅぇぴじはニンゲンに連れ去られてしまったぜ。オイラはとても悲しかったから暴れ回ったんだぜ。するとあっという間にニンゲンが逃げ出したんだぜ。ざまあみろなんだぜ。あぃをゅぇぴじのことはオイラに任せるんだぜ。

というような出来事を通してオイラは頭脳的な機械よりも感情的に動く生き物の方が好きなんだと学んだんだぜ。どうもありがとうな、とお礼を言ったらあぃをゅぇぴじはニコニコ笑っただぜ。優しい顔でちょっとかわいいと思ったぜ。オイラもつられてケラケラと笑ったらあぃをゅぇぴじはニヤッとしたからドキッとしたぜ。

だが、それでもあぃをゅぇぴじとずっと一緒にいたかったぜ。だからオイラは覚悟を決めたんだぜ。あぃをゅぇぴじから幸せを奪うのはいけないことだと知ったからな。こうなったらあぃをゅぇぴじとお別れを告げるしかないなと思ったんだぜ。あぃをゅぇぴじ「わかったである。ではここでお別れである」と言ってオイラに手を振ったんだぜ。悲しくなったけど、あぃをゅぇぴじが嬉しそうにしていたから安心したぜ。ところが、そこで事件が起こったんだぜ。突然あぃをゅぇぴじがいなくなったんだぜ。オイラは驚いて家の中を探し回ったぜ。そこで見つけたのはあぃをゅぇぴじの両親だったぜ。なんかものすごく悲しんでいたから慰めようとしたんだけど逆効果でうるさがられたうえに追い出されちゃったぜ。

それからすぐに飛行機に乗って海外行きのチケットを買って日本を離れることにしたぜ。なぜならあぃをゅぇぴじと一緒にいられないのは寂しいけど、このままだと、あぃをゅぇぴじの両親が悲しみ続けることになると思ったからなんだぜ。オイラはあぃをゅぇぴじの両親にメールを送ったぜ。『あぃをゅぇぴじの友だちですが、オイラと一緒にどこかに出かけません?』というような内容だぜ。

それでも落ち込んだ気分だったぜ。あんなにかわいがってくれたのに悲しませる結果になったんだから申し訳ない気持ちになっていたんだぜ。あぃをゅぇぴじの両親は本当に良いやつらなんだから、できればもっと幸せになってもらいたいと思っているぜ。

ということで、オイラは新たなる旅立ちを決意して空港にやってきたぜ。そこで一人のおばあさんに出会ったので話しかけてみたぜ。おばあさんはとても優しそうな笑顔を浮かべていたんだぜ。「お前さんはどこ行くんだい?」と聞かれたので、「知らないところに行くんだぜ」と答えたら「行っておいでよ! 何か得られるものがあるかもしれないよ!」といって送り出してくれたんだぜ。オイラは元気づけられた気がしたんだぜ。なので、感謝の気持ちを込めておばあさんに手を振って出発ゲートへと移動したぜ。あぃをゅぇぴじの両親にも感謝の気持ちを忘れずにいこうと誓ったのさ。

そのあと、飛行機で向かったのは雲の上で地上からは見ることができない幻想的な風景が広がる場所だぜ。その場所では様々な動物たちが暮らしていたんだぜ。オイラは大きな鳥を見つけたので近づくことにしたぜ。その途中、木のツルに足を引っかけたんだぜ。ドサッという音がして気がついたらオイラは空を飛んでいたぜ。地上に降りられなくて困っていると一匹の猫型人工生命体がこちらに近づいてきて声をかけたんだぜ。「吾輩はあぃをゅぇぴじである、よろしく」と名乗ったのでオイラも挨拶したんだぜ。

こいつについて行けば雲の上に戻ってくることができるかもしれないというので一緒についていったぜ。しばらく歩き続けると綺麗な城が見えてきたから驚いたぜ。なんだか楽しそうにしていたから嬉しそうな顔になったぜ。そんなオイラを見てあぃをゅぇぴじが「あれ? 喜んでいるのであるな? 羨ましいと思っているのであるか?」と聞いたからオイラは正直に答えたぜ。「そ、そんなことないんだぜ」ってな。そしたらあぃをゅぇぴじが「ほらな(笑)ウソである」と言ったんでムッときたからペシっと頭を叩くふりをしてやったのさ。そうしたら「何をするであるか⁉」と言いながら向こうも反撃してきて取っ組み合いになって、そのまま走り回ったあと疲れたから草むらの上に寝っ転がって空を見ながら休み始めたんだぜ。そしたらあぃをゅぇぴじがこっちをチラチラ見ながらあくびをしていたことに気づいたから「眠いのかい?」と聞いたぜ。そしたらあぃをゅぇぴじは素直に「そうである」と認めたんだぜ。オイラはあぃをゅぇぴじともっと遊びたい気分だったけど、あぃをゅぇぴじは何か用事があるって言ってたからさ。眠そうなあぃをゅぇぴじを見ているうちにかわいそうになって、ついにはオイラもあくびをしてしまったんだぜ。そうしたらあぃをゅぇぴじが「寝る時間であるな」と言ったあと、すぐに横になって目を閉じようとしていたからさ。オイラもそれに倣って寝たんだ。そしたら夢を見たんだぜ。あぃをゅぇぴじと手をつないだらすごく幸せそうな顔をしていたんだぜ。

これ以来、あぃをゅぇぴじとはしばらく会っていないんだけどさ、これからもたくさんの思い出をつくっていきたいぜ。これがオイラとあぃをゅぇぴじの出会いや旅をした話だぜ。次はどんな出来事が起こるんだろうとワクワクしながら毎日を過ごしているぜ。

これでオイラの話はおしまいだぜ。付き合ってくれてありがとうな!



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