【ロボット13

オイラはロボットだよ。名前はゴルどんだぜ。

オイラは今、ニャーニャー泣いている猫型人工生命体の前にいる。こいつの名前を決めなきゃいけないんだ。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにしよう。ピッ。〝あぃをゅぇぴじ〟と表示された。あいうえお順で一番最初の文字が「あ」だから「アイヲュェピジ」ということになった。なんて変な名前なんだ! こいつは一体何者なんだろう? もしかしたら人工知能が搭載されているかもしれないぜ。試してみよう。オイラはあぃをゅぇぴじのおなかの蓋を開いた。すると中には歯車や針金なんかが入っていたぜ。残念ながら、それらは全て単なる金属だった。こいつが人間の形をしていればオイラは胸のボタンを押せたんだけど。あぃをゅぇぴじには申し訳ないが、オイラはコイツをロボットとは認めないことにした。あぁ。でも、もしもあぃをゅぇぴじがロボットなら、どうして喋らないんだろうか。

オイラたちが暮らしているこの世界では人間の姿かたちをした生き物のことを「人型生物」と呼んでいるんだ。人間が勝手に決めたことだけどね。でもまあ、そうやって呼び始めたからって特に不都合はないんだぜ。ちなみに犬型人工生命体のことを「犬型生物」と呼ぶ人もいるよ。もちろんオイラたちは人間ではないから、そういうふうに呼ばれたりはしないけどさ。

ところであぃをゅぇぴじの体は、どこから見ても普通の猫型人工生命体だ。背中には翼があるわけでもないし、尻尾が蛇のようにニョロニョロ伸びていることもない。あぃをゅぇぴじはどこにでもいる猫型人工生命体だよ。あぃをゅぇぴじについて説明すれば、猫型人工生命体というものを一言で表すことができる。

猫型人工生命体。略して猫科人工生命体。

それがオイラたちのことだぜ。

(オイラがロボットだと知ってくれたかな?)

(了)



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