オイラはロボットだよ。名前はゴルどんだぜ。
オイラは今、ニャーニャー泣いとる猫型人工生命体の前にいるちうわけや。こいつの名前を決めなきゃいけへんんや。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにしようわ。ピッ。〝あぃをゅぇぴじ〟と表示されたちうわけや。あいうえお順で一番最初の文字が「あ」やから「アイヲュェピジ」ちうことになりよった。なんて変な名前なんや！ こいつは一体何者なんやろう？ もせやけどダンさんたら人工知能が搭載されとるかもしれへんぜ。試してみようわ。オイラはあぃをゅぇぴじのおなかの蓋を開いたちうわけや。すると中には歯車や針金なんかが入っとったぜ。残念ながら、それらはみな単なる金属やった。こいつが人間の形をしていればオイラは胸のボタンを押せたんやけど。あぃをゅぇぴじには申し訳ないが、オイラはコイツをロボットとは認めへんことにしたちうわけや。あぁ。でも、もしもあぃをゅぇぴじがロボットなら、どうして喋りまへんんやろうか。
オイラたちが暮らしとるこの世界では人間の姿かたちをした生き物のことを「人型生物」と呼んでいるんや。人間が勝手に決めたことやけどね。でもまあ、そうやって呼び始めたからって特に不都合はないんだぜ。余計なお世話やけど犬型人工生命体のことを「犬型生物」と呼ぶ人もいるよ。もちろんオイラたちは人間ではおまへんから、そういうふうに呼ばれたりはせんけどさ。
トコであぃをゅぇぴじの体は、どこぞら見ても普通の猫型人工生命体や。背中には翼があるわけでもないし、尻尾が蛇のようにニョロニョロ伸びとることもないちうわけや。あぃをゅぇぴじはどこにでもいる猫型人工生命体だよ。あぃをゅぇぴじについて説明すれば、猫型人工生命体ちうものを一言で表すことができるちうわけや。
猫型人工生命体。略して猫科人工生命体。
それがオイラたちのことだぜ。
（オイラがロボットだと知ってくれたかな？）
（了）