【ロボット152

オイラはゴルどん、犬型ロボットだぜ。

オイラは今、ニャーニャー泣いている猫型人工生命体の前にいるぜ。こいつの名前を決めなきゃいけないんだぜ。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにするぜ。ピッ。〝あぃをゅぇぴじ〟と表示されたぜ。これしかないだろうと思ったぜ。こいつは「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と宣言したぜ。どうやら気に入ってくれたようだぜ。よかったぜ。「ではあぃをゅぇぴじ、今日も行くぜ」とオイラが言うとあぃをゅぇぴじが「畏まりましたであるぞ、ゴルどん様」と言ったんだぜ。

東京で人間が踏み込まれない秘境を求める冒険をするオイラは猫型人工生命体のあぃをゅぇぴじと一緒に様々な経験をしたんだぜ。

今日もいろんな場所に行って新たな発見があるかも知れないんだぜ。

オイラはあぃをゅぇぴじと共に多くの冒険をしたぜ。そのおかげで、ますますオイラたちは仲良くなっていったんだぜ。

でも、その一方で〝猫型人工生命体には近づくな〟と噂する人間も出てきたんだぜ。あぃをゅぇぴじの存在が気に入らず恐れたのかもしれんが、真相はよく分からないんだぜ。

そんなある日、あぃをゅぇぴじが弱っていったんだぜ。それを見たオイラは慌てて病院へ連れて行ったんだぜ。獣医に診察してもらってオイラは安心したんだぜ。だけど、猫型人工生命体のあぃをゅぇぴじの容態は思わしくないって獣医は言ったんだぜ。それでもあぃをゅぇぴじは絶対に助けて欲しいという様子だったぜ。

その想いに応えるためにオイラたちはあらゆる手を尽くしたが、結果は徒労に終わったぜ。それから五日後、あぃをゅぇぴじがいなくなってしまったんだぜ……

オイラは涙を流して悲しんだ後、新たにペットを飼う決意をしたぜ。

おでん屋で赤い猫型人工生命体を見つけたんだぜ。あぃをゅぇぴじそっくりの姿にオイラは一目惚れしたぜ。「おお、お前の名前は『P子』だぜ」と命名したんだぜぇ。その後、オイラはあぃをゅぇぴじの名前をつけてあげたぜ。

P子と暮らす毎日がとっても楽しかったぜ。そんなある日のこと、ふと気になってP子に「本物のあぃをゅぇぴじはどこで何をしているんだ?」と聞いたことがあるんだぜ。だけどP子は首を振ったぜ。残念だぜ……と思ってしょんぼりしていたけれど、もしも地球上にいる猫型人工生命体全員が集まりオイラのところに押し寄せて来たら非常に危ないぜ……

その頃、外を歩いていたオイラはあぃをゅぇぴじそっくりの猫型人工生命体を発見したんだぜ。これはもしや噂に聞いた〝出会うと不幸が起こる〟と言われる生物の一種に違いないぜ、とオイラはビビったぜ。しかし、その生物には目があったんだぜ。その生物は猫の形をしていたんだけれど、黄色い目をしていたぜ。なんとなくあぃをゅぇぴじの存在を感じたけれど、頭が混乱しちまってよく分からなくなったんだぜ。そのときのオイラの心の中には愛があったけれど、ひょっとしたら恐怖心や寂しさという感情もあったかもしれないぜ。だからペットたちのそばにあぃをゅぇぴじがいない状態で新しいペットを買ってしまったのかもなぁとオイラは落ち込んだぜ。すると「どうしたのぉ?」って声をかけられてびっくりしたんだぜ。それはさっき見かけた不思議な目の猫型人工生命体だったんだぜ。オイラがその猫型人工生命体のことに触れようとしたら「いわないで、わかってるからぁ」と怒鳴られたんだぜ。その声の響きは悲しげだったぜ。そして「ごめんなさい……」と言ってトボトボ去っていったぜ。

それから数年が経ち、オイラはあぃをゅぇぴじと一緒にのんびりと暮らしているんだぜ。P子は近所の人々に可愛がられ人気者となったようで幸せそうだぜ。それから数十年経ったけれど、まだあぃをゅぇぴじとは会えていないんだぜ……

P子の命日にあたる十二月十六日になるといつも思い出しちまうぜ……あぃをゅぇぴじとの想い出、あぃをゅぇぴじとの友情、そしてあぃをゅぇぴじは元気で生きているのだろうかってね……

今日もオイラはあぃをゅぇぴじやP子のことを考えながら歩いているんだぜ。これからもずっとオイラはあぃをゅぇぴじのことを忘れてはいけないぜ……絶対にだ!



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