【ロボット231

オイラはゴルどん、犬型ロボットだぜ。

オイラは今、ニャーニャー泣いている猫型人工生命体の前にいるぜ。こいつの名前を決めなきゃいけないんだぜ。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにするぜ。ピッ。〝あぃをゅぇぴじ〟と表示されたぜ。これしかないだろうと思ったぜ。こいつは「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と宣言したぜ。どうやら気に入ってくれたようだぜ。あぃをゅぇぴじとオイラは仲間になったんだぜ。

ある日の午後、オイラはあぃをゅぇぴじとベランダに出たら外が暑かったんだぜ。キッチンにあったスイカを思い出したから持っていくことにしたぜ。ズトン! ズドンッ‼ 次々と冷蔵庫からスイカを取り出すことに成功したんだぜ。テーブルの上に積み上がったスイカを見てあぃをゅぇぴじは言ったぜ。「素晴らしいですね。吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と。そしてあぃをゅぇぴじはスイカに舌を付けたぜ。次の瞬間、「シュボガボオゥ‼」と妙な音を立てて煙が出る音が鳴ったんだぜ。びっくりして見ると、なんとあぃをゅぇぴじの舌が溶けていたんだぜ。オイラはあぃをゅぇぴじとともに慌てて駆けだしたぜ。水道の蛇口やシャワーまで使いながら、オイラたちは掃除を始めたぜ。一列になって作業中なんだぜ。そんなオイラたちの後ろをあの毛むくじゃらの一ツ目が付きまとってくるぜ。そう、「この物語はフィクションです。あぃをゅぇぴじは架空の存在です」という文字が表示するようにだぜ、ピカンピカンッ‼ これは何かの偶然の一致だと思ったら気のせいだったんだぜ。どうやらあの二つのギョロリとした目玉が物語を面白おかしく語るつもりらしいんだぜ。だけどオイラにはそんなの関係無いんだぜ! 関係あるのは猫型人工生命体、あぃをゅぇぴじだぜ!

あぃをゅぇぴじは「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と大きく叫んでたぜ。また鳴いちまってたんだぜ。ところが、お隣のベランダは変な音を出していたんだぜ。窓ガラスを開けて確認すると、この部屋より恐ろしいことになっていたんだぜ。お隣も部屋の中が焼け焦げたような臭いでいっぱいだったし、そこかしこの壁がボロボロになっていたぜ。窓際に置かれていた椅子やテーブル、床に落ちている雑誌や書物も端っこが焦げていてボロボロなんだぜ。キッチンもバスルームもゴム製のおもちゃの山の中が燃え尽きたように灰になっていたぜ。オイラたちは燃えてしまったちゃぶ台やベッドなどを片付けたり、壁を拭いたりしたんだぜ。途中であぃをゅぇぴじの目がビー玉くらいにまで巨大化してしまったんたぜ。そこでオイラたちは掃除を終えて再び外に出たんだぜ。「あぃをゅぇぴじは凄いなあ。一瞬で部屋が無くなったもんな。まるで大砲を撃ったみたいじゃないか」とオイラは言ったぜ。あぃをゅぇぴじはオイラの誉め言葉に対し、尻尾を左右にゆっくりと振りながら言ったんだぜ「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである。名前など聞く暇があったら働くんだ! シュボガボオゥ‼」ってな調子だぜ。

そのときだったんだぜ、その煙がお隣からの強い風であぃをゅぇぴじの方に飛んできたんたぜ。あぃをゅぇぴじはその煙を必死に拭い取っていたんだぜ。そんなのオイラは全然気にならないぜ! そんなことよりも掃除と片付けのことで頭がいっぱいだったからな。あぃをゅぇぴじとの学校が始まって以来、こんな気持ちになったことは初めてだぜ。これからどうなるんだろう? あぃをゅぇぴじ、面白いなあ……

小説を読むのが好きで得意で楽しかったときの話をしようと思うぜ。あぃをゅぇぴじもそこにいるよな、しかも家でのんびりとしてるぜ。オイラたちはお引越しすることになったんだぜ。バタバタしながらも落ち着いていこうな、とオイラは言ったんだぜ。「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」あぃをゅぇぴじは言ったぜ。また鳴ってたぜ、シュボガボオゥって鳴き声がよう! せっせとゴミ置き場まで運んだりして忙しすぎるときも何もかも楽しかったなと思うぜ。とにかく「楽しい時間」だったんだぜ。

ところで、オイラたちのお家だ。あったかい春風がそよそよと吹いているお日様を背中にしょって明るくなってきたぜ! 新築の建物の真下でオイラとあぃをゅぇぴじは泳ぐようにして必死に掃除を進めていたぜ! あぃをゅぇぴじは言ったんだぜ、「吾輩の名はあぃをゅぇぴじである」と繰り返し繰り返し……

ここで終わりだぜ。



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