【ロボット8

オイラはロボットだよ。名前はゴルどんだぜ。

オイラは今、ニャーニャー泣いている猫型人工生命体の前にいる。こいつの名前を決めなきゃいけないんだ。無作為に文字を表示する機械で名前を決めることにしよう。ピッ。〈あぃをゅぇぴじ〉と表示された。こいつは〈あいをゅぇぴじ〉というのか。じゃあ、こいつも仲間にすることにするよ。オイラは猫型の背中を押した。すると、そいつは転んでしまった。痛そうだったからオイラは手を伸ばした。そしたらまた蹴られた。なんて奴だ。オイラは怒って飛びかかった。しかし、オイラの拳は空を切るだけだった。くっそー。オイラが怒っていると、そいつは走って逃げていった。やれやれだぜ。

さっきまでニャーニャーニャーうるさく鳴いていた猫型人工生命体がいなくなってしまったのでオイラたちは困ってしまった。仕方がないからオイラも帰ることにした。オイラが歩き始めるとあぃをゅぇぴじが付いてきた。オイラが振り返ると、あぃをゅぇぴじは立ち止まっていた。どうやらオイラについて来ようとしているようだ。まぁいいか。オイラは歩くことにした。

しばらく歩いていると後ろの方でガシャッとかカチャッといった音が聞こえてきた。振り向くと、そこには小さな歯車が並んでいた。歯車の周りをよく見ると金属でできた輪っかがあった。きっとこれはあぃをゅぇぴじが作ったものだ。オイラにはわかるぜ。オイラが褒めたら、あいつは照れて体をクネクネさせながら尻尾を振った。

それから数日が経ったある日のこと、オイラたちの前に一人の男が現れた。男は黒いローブを着ており顔はよく見えなかったけど、とても背が高かった。男が言った。「僕の名前は佐藤一郎です。僕はこの世界で起こっている出来事を知りました。」佐藤はオイラたちに語り始めた。

佐藤によると、この世界にはもともと佐藤が住んでいた世界とは別の世界があるのだという。その世界では佐藤のような人間が住むのはもちろんのこと、佐藤と同じ名前の動物がいるのだそうだ。その世界の佐藤は犬を飼っていた。その犬の名は佐藤太郎という名前なのだそうだ。そして、その佐藤太郎は別の佐藤の飼い猫であるあぃをゅぇぴじのことを気に入っていた。その佐藤の飼い猫であるあぃをゅぇぴじもまた佐藤太郎のことが大好きだった。その佐藤の飼う猫のあぃをゅぇぴじは、ある日突然、その佐藤の住む世界へ迷い込んでしまう。そして、あぃをゅぇぴじはその佐藤の暮らす街で暮らし始めてしまった。あぃをゅぇぴじはこの世界でもすぐに友達ができたらしく、毎日楽しそうに暮らしていた。

ところが、ある時、あぃをゅぇぴじは元の世界へ戻る方法を見つけてしまう。あぃをゅぇぴじはそれを実行して元の世界に戻ろうとした。しかし、あぃをゅぇぴじは帰れなかった。あぃをゅぇぴじはあっちの佐藤のところへ行きたくなってしまったのだ。そこで、あぃをゅぇぴじは佐藤を連れて帰るためにこちらの世界にやって来た。しかし、どういうわけか、こっちの世界のあぃをゅぇぴじも同じように向こうの佐藤のところに帰りたくなったのだった。あぃをゅぇぴじが言うには、こっちのあぃをゅぇぴじも向こうのあぃをゅぇぴじもお互いに相手のことを好きになってしまったので、どうしても自分の方を選んで欲しいということだった。それで、どちらの佐藤を選ぶのか決めるために選ばれた方がもう一方の相手を殺さなければならないのだと言う。オイラたちはそれを黙って聞いていた。

しばらくして、オイラはこう言ってみた。「オイラ、あぃをゅぇぴじ、どっちでもいいぜ」すると、あぃをゅぇぴじが答えた。「吾輩は、ゴルどん、お前と一緒ならどちらでもよい」それを聞いた佐藤が言うには、どちらか一人しか選べないのであれば、選ぶ必要はないということだ。佐藤はあぃをゅぇぴじに尋ねた。あぃをゅぇぴじは答える。「吾輩が選んだ方の佐藤が死ぬというのは辛いことだが仕方がない」

佐藤が言った。

あぃをゅぇぴじとオイラが聞いた。

佐藤が言った。

こうしてオイラたちは二人とも生き続けることになったんだぜ。

おしまい。



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